「Twitch」がゲーム以外の分野でも急成長、VTuberも存在感--アジア地域担当上級副社長に聞く

 2020年に入ってから、さまざまな業種ならびにサービスが新型コロナウイルス感染症の影響を受けるなか、動画配信サービスは巣ごもり需要の影響もあってか、視聴時間や利用率などが伸長。市場が拡大を続けるなか、提供する各サービスでもさまざまな施策を展開している。

 グローバルに展開し、日本でもゲーム動画配信で知られる「Twitch」も、近年ではゲームにとどまらないライブ配信プラットフォームとしての取り組みも進めている。今回はTwitchアジア地域担当上級副社長を務めるスニータ・コール(Sunita Kaur)氏に、近年における動画配信サービスの市場動向やTwitchとしての取り組み、今後の展開について聞いた。

Twitchアジア地域担当上級副社長 スニータ・コール(Sunita Kaur)氏
Twitchアジア地域担当上級副社長 スニータ・コール(Sunita Kaur)氏

ゲームのライブ配信以外でも「音楽」「スポーツ」「雑談配信」が伸びている

――2021年におけるTwitchを振り返って、動向や取り組まれたことなど、トピックとなるものがあればお話しください。

 ここ2年ぐらいで、世界的に新型コロナの流行があって、私たちのビジネスやサービスが大きく成長しました。世界中で友人や家族などの繋がりが希薄になってしまう状況になり、人々は、繋がりやコミュニティを欲するようになりました。それと同時に、新たな形でのエンタメも求めるようになり、そのなかで、自宅から安全にエンタメを楽しみたいと思うようになったからととらえています。

 Twitchは、エンタメの未来の場であると考えています。個人が個性を発揮しながら配信をし、視聴することができる。コンテンツが充実した、コミュニティにもとづくエンタメの場になっています。

 世界のトレンドとして、Twitchを視聴するみなさんは、エンタメを見たいと思って来るのですけど、滞在し続けるのはコミュニティの力があってこそだと言えます。視聴者の方々も幅広くかつ深い層を持っていまして、1日平均で2時間ぐらいの視聴時間となっています。また2021年時点における数字として、アジア地域での視聴時間は大きく成長していて、前年比40%増となっています。特にアジア地域で見ても、日本は最速レベルで成長しているマーケットです。

 試聴時間が拡大することにともなって、コンテンツの需要も高まって充実させていかなければいけません。ただ、あわせて参加していただいているクリエーターの数も増えています。アジア地域におけるひと月あたりのアフィリエイトやパートナー、新たに参入してくる方も、ここ約2年間で2.6倍に増えました。

――日本が最速レベルで拡大している要因は何でしょうか。

 いろいろな理由があるのですが、世界的にライブ配信の市場が拡大したなかで、日本のコミュニティも拡大したこと、そしてたくさんの方がTwitchを見出していただいたことが大きいと考えています。ほかにも、ゲーム配信以外の領域で、音楽などのジャンルを立ち上げたり、機能の充実を図ったことも理由として考えています。

――Twitchは、ゲームジャンルに強いライブ配信サービスのイメージがありますが、ほかのジャンルも立ち上げられたとあります。実際どういったジャンルを立ち上げ、人気となっているのでしょうか。

 確かに、我々のルーツはゲームライブ配信にあります。一方で、それ以外のジャンルについても拡大、強化しているところです。それについてもここ3年間ぐらいで取り組んできているのですが、特に大きいのが「音楽」「スポーツ」「ジャストチャッティング」(雑談配信)ですね。

 音楽については2020年から2021年にかけて、前年比の視聴時間は550%の成長率で、非常に大きく伸びた領域です。配信するミュージシャンが、Twitchが足掛かりの場であったり、ファンと直接繋がることができる場であること。音楽プラットフォームとしての価値を見出していただいた結果と考えています。

 スポーツについては、スポーツ選手による配信であったり、スポーツのリーグが直接自分たちのファンと繋がれる場として見出されたことがあるかと思います。日本におけるスポーツカテゴリでも、視聴時間は101%に拡大しました。特に、バスケットボールライターとして活動している大西玲央さんは、オーストラリアのプロバスケットボールリーグ(NBL)の試合を同時配信していたことが話題になりました(※NBLには、日本人の馬場雄大選手が所属している)。

 雑談配信については、2021年時点で前年比234%と大きく伸びていますし、今後も継続して関心も視聴時間も高まっていくジャンルと考えてます。雑談がこれだけ大きく成長している理由は、まずコミュニケーションの一環として、人とやり取りする場が求められていること。そして、社会的な人とのつながりが、この状況下によって重要性が増してきていることが背景にあると考えています。

音楽(music)ジャンルにもフィーチャーしている
音楽(music)ジャンルにもフィーチャーしている

――スニータさんは、かつてSpotifyに在籍されていたと伺ってます。音楽ジャンルが拡大していると話されてましたが、音楽業界や音楽配信サービスに従事していた経験が活かせるものはあると考えていますでしょうか。

 ゲームと音楽というのは、密接な関係にあるコンテンツだととらえていますし、Twitchというコンシューマ主導型コンテンツを提供していくうえで、音楽というのは非常に重要だと思ってます。私たちが提供しているのはサービスとしての音楽であって、サービスを提供する上で大切なのはカスタマーファーストです。ここで言うカスターマーは視聴者だけではなく、配信を行うクリエーターも含めてです。

 Spotifyには7年ぐらい在籍していましたが、それ以前にもテクノロジやメディアの業界に20年以上携わってきました。2019年末にSpotifyから離れて、次に何をしようかと考えていた時に、次のディスラプター(※既存の業界の秩序やビジネスモデルを破壊するような存在を意味する「破壊的企業」のこと)に関わりたかったんです。あわせて、ライブ配信の世界に関わりたいとも考えていました。

 Twitchでは2年ぐらい前からライブミュージックを展開して、強化させていきたいという方針もありました。アーティストやクリエーター、それとオーディエンスを、インタラクティブな形で繋げていく場が重要になっていくだろうと。今後の音楽におけるオーディエンスが求めるのも、その方向だろうと考えると、確固たる明るい未来があるからこそ、Twitchに入ったというのが経緯になります。私の経験をもとに、アーティストとオーディエンスの両方の観点から、Twitchをより強力に推進していきます。

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