欧州議会、仮想通貨取引を追跡できるようにする規制案を可決

Liam Tung (CNET News) 翻訳校正: 中村智恵子 高森郁哉 湯本牧子 (ガリレオ)2022年04月04日 11時09分

 欧州連合(EU)の議員らは、仮想通貨(暗号資産)の送受信を追跡可能とすることを義務付ける厳しい規制に向けて前進した。

 新たに提案された規制は、暗号資産サービス事業者(CASP)が仮想通貨送金の送り手と受け手に関するID記録を保持し、その記録を「管轄当局」に提供することを義務付けるものだ。

 この規制は、2021年7月にEUの欧州委員会がマネーロンダリング対策(AML)およびテロ資金供与防止策(CFT)に関する提案の概要を示したことを受けて、AML/CFTに関するEUの改正パッケージの一部となるものだ。欧州委は、匿名の仮想通貨ウォレットを禁止することを目指している。

 欧州議会の議員らは欧州銀行監督機構(EBA)に対し、 「規則を順守しない事業者の大まかなリスト」を含む、AML/CTF規制に違反するリスクの高いCASPの公開登録簿を作成するよう求めている。

 欧州議会は法案の可決を報告するプレスリリースの中で、「暗号資産を受益者に提供する前に、事業者は資産の出所が制限的措置の対象ではなく、マネーロンダリングやテロ資金調達のリスクがないことを確認する必要がある」と述べた。

 欧州議会の経済金融委員会(ECON)と市民的自由・公正・内政に関する委員会(LIBE)に所属する議員らは現地時間3月31日、同法案の採決を行い、賛成93票、反対14票、棄権14票で可決した。最終的な内容に関する協議を経て、4月の欧州議会本会議で採決される予定だ。

 欧州議会の政治会派である欧州緑グループ・欧州自由連盟の副議長で、ECONの共同報告者であるErnest Urtasun氏(スペイン)は、「暗号資産の不正な流れは欧州をはじめ世界中でほとんど検出されないので、匿名性を確保するための理想的な手段となっている」と述べた。

 Urtasun氏は、仮想通貨の取引方法は犯罪者によって異なるという理由から、1000ユーロ(約13万5000円)以上としていた電信送金の監視基準額を撤廃するなど、欧州委の提案に加えられた主な変更について、Twitterへの投稿で補足した。

 「犯罪者は送金を少額にすることで大規模な活動を隠ぺいしている。複数のアドレスを使えば、少額ずつ複数に分けて自動送金できる。詐欺や不正行為、ハッキング、テロ資金調達などの犯罪行為は少額でも可能だ」(同氏)

 公開登録の目的は、規制に準拠していない事業者、高リスクのCASP、仮想通貨取引の匿名性を提供するミキサーやタンブラーと呼ばれるサービス、犯罪行為とつながりのある仮想通貨ウォレットなどを、他の適切なプロバイダーが特定できるよう支援することだ。

 Urtasun氏はプライバシーの保護についてもツイートした。「取引相手がデータの機密性を保護できないリスクがある場合は、転送時に情報を含めず、取引相手に情報が転送されることもない。われわれはデータ保持の期間と条件を明確にする」

 非ホスト型ウォレットとの送受信も、トレーサビリティーの規則および報告の対象となり、識別情報を確認する必要が生じる。

 今回の採決に先立ち、仮想通貨取引所Coinbaseの最高法務責任者(CLO)を務めるPaul Grewal氏は、法執行機関はすでに高度な分析ツールを使ってデジタル資産の移転を追跡できるとして、懸念を表明した。

 Grewal氏は次のように警鐘を鳴らした。「この改定案が導入されれば、Coinbaseなどの取引所に完全な監視体制が敷かれ、イノベーションを阻害し、個人がデジタル資産を安全に保護するために利用しているセルフホスト(自己管理)型ウォレットの根幹を揺るがすことになる」

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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