ロシアが現地時間2月24日にウクライナへの侵攻を開始したとき、キエフ生まれの写真家であるVitaliy Raskalov氏は祖国から遠く離れた場所にいた。筆者が27日夜にメッセンジャーアプリの「Telegram」でRaskalov氏と話したとき、同氏はメキシコシティにおり、祖国に防弾チョッキを輸送する手配で忙しそうにしていた。支払いは全て仮想通貨で行われる。
Raskalov氏は6カ月前から、自身の写真コレクションを非代替トークン(NFT)としてOpenSeaで販売している。OpenSeaは世界最大規模のNFTマーケットプレイスだ。この戦争が始まって以来、高層ビルなどの恐ろしく高い建造物から撮影された写真で構成される同氏の写真コレクションの全収益は、ウクライナのレジスタンスに寄付されている。
同氏はこれまでに約4「イーサ」(約130万円)を調達している。これらの資金は、ヘルメットや懐中電灯、防弾チョッキなどの装備の購入に充てられるという。
「私はウクライナ国内にいないので、武器を手に取って祖国を守ることはできない」と同氏。「しかし、お金を集めたり、調達したりして、力になることは可能だ」
Chainalysisによると、ウクライナはベトナム、インド、パキスタンに次いで、世界で最も仮想通貨の採用が進んでいるという。Chainalysisと同様に仮想通貨の分析を手がけるEllipticによると、ロシアの侵略に対抗するグループへの寄付が2021年後半に急増し、2020年には6000ドル(約70万円)相当だった仮想通貨調達額が2021年には55万ドル以上相当に増加したという。Ellipticのデータでは、ロシアが先頃ウクライナで軍事作戦を開始して以来、本稿執筆時点で1890万ドル(約22億円)相当が調達されたことが示されている。
その多くは、ウクライナ政府への直接の寄付によるものだ。2月26日午後、ウクライナのデジタルトランスフォーメーション大臣を務めるMykhailo Fedorov氏は、「ビットコイン」やイーサ、「テザー」(米ドルと連動するステーブルコイン)を直接寄付できるウォレットアドレスをツイートした。ウクライナの公式Twitterアカウントも同じアドレスを投稿している。Ellipticによると、それ以来、1万5947件の取引を通して、1200万ドル以上に相当する額がこれらのウォレットに寄付されたという。この成功は、ウクライナの国内外での資金調達状況を一変させかねない
「この4日間の出来事に単純に驚いている」とRaskalov氏は語った。「そのことについては非常に満足しているが、同時に怒りも感じている。小規模なNFTコミュニティーとTwitterで1000万ドル(約12億円)以上に相当する額を調達した一方で、欧州連合(EU)のほとんどの国は何もしなかったからだ」
EUは、4億5000万ユーロ(約580億円)の援助を行う計画を表明している。
ウクライナ政府への直接の寄付とは別に、非政府組織(NGO)やRaskalov氏と同様の取り組みによってさらに数百万ドルが調達された。注目すべきは、ロシアのパンクロックグループPussy Riotによって立ち上げられたUkraineDAOが300万ドル以上に相当するイーサを調達したことだ。分散型自律組織(DAO)とは、トークン所有者が資金の使い道について投票できるグループのことである。
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