Appleが配信する映画「コーダ あいのうた」が米国時間3月27日、Netflixを抑えて配信サービスの映画として初めて、アカデミー賞の作品賞を受賞した。Netflixも「パワー・オブ・ザ・ドッグ」で同部門にノミネートされており、2つの配信サービスによる両作品が、同部門の有力候補とみられていた。
「Apple TV+」、Netflix、その他競合サービスの間の競争がますます激化する中で、Appleによる今回の偉業が、比較的新参であるApple TV+の新規加入者の増加につながることは間違いない。この3年間で複数の企業が、Netflixなどに対抗してテレビの未来を形作ることを目指し、莫大な費用を注ぎ込んで新しいサービスを立ち上げている。
Appleの配信作品が27日にアカデミー賞の複数部門で栄冠を手にしたことで、加入を検討している人々の間で同社への注目度が高まり、解約した元加入者の一部が返ってくる可能性もある。また、Apple TV+は間違いなく、優秀な人材にとってより魅力的な場になるだろう。
しかし、栄誉ある賞を最初に受賞したことが、必ずしも配信サービスに転機をもたらすとは限らない。
例えばHuluは2017年に、Netflixを抑えてエミー賞ドラマ・シリーズ部門作品賞を受賞したが、その後もNetflixの独占的地位の陰に潜み続けている。Netflixの世界会員数が2億2100万人を超えているのに対し、Huluは4500万人にとどまっている。
Apple TV+の会員数は、それよりもさらに少ない可能性がある。同社はApple TV+の会員数を公表したことがないが、The Informationは2021年9月、Apple TV+の会員数を約4000万人と報じ、その約半数が無料体験期間中だとした。Varietyは同年1月、Apple TV+加入者の62%が無料のプロモーションを利用しているとの調査結果について報じていた。別の調査会社は、そのため2021年に米国におけるApple TV+の解約率が主要な動画配信サービスの中で最も高かったとする調査結果を公開した。
Team CODA created a profoundly beautiful movie, a story of hope and heart that celebrates our differences. Congratulations to the producers, @SianHeder, @TroyKotsur, @MarleeMatlin, @EmiliaJonesy, @DanielNDurant, @EugenioDerbez, and all involved in these historic wins! #CODAfilm pic.twitter.com/s9ebnPaYl1
— Tim Cook (@tim_cook) March 28, 2022
Apple TV+は、ハリウッド最高峰のスターを複数確保するために数十億ドル規模の予算を投じ、従来とは異なる戦略を打ち出した。莫大な予算を投じた、スターぞろいの上質なオリジナル作品だけを制作するというものだ。Apple TV+は提供開始時、計9つの作品しか視聴できなかった。それから2年半が経ち、作品数は100以上に増加している。
一方、Netflixは2~4月だけで100作品以上をリリースしている。
Netflixは長年にわたり、アカデミー賞作品賞の受賞を目指してきた。10年前にオリジナル作品の制作を始めてから、2014年にアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞に初めてノミネートされ、2017年には短編ドキュメンタリー賞を初めて受賞した。2021年には7部門で受賞して、制作スタジオとして最も多くのオスカー像を手にしたが、最優秀作品賞には手が届かなかった。
作品賞の受賞によって、上質な作品を追求してきたAppleの取り組みが、それに見合う栄誉ある賞という形で報われたことは間違いなさそうだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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