Appleの持ち物トラッカー「AirTag」は、紛失した鍵や財布などを見つけるためのハイテクなソリューションとして提供されている。しかし、2021年4月の発売以来、この製品はストーカーなどの不正行為にも悪用されてきた。
「これまでで最も恐ろしい瞬間だった。このようなことが起きていると皆さんにも知ってもらいたい」と、Sports Illustrated誌で活躍するモデルのBrooks Naderさんは1月、Instagramへの投稿で語った。ある夜、バーから徒歩で帰宅する途中、デバイスに現在地を追跡されている旨の通知が「iPhone」に届いたという。帰宅後、コートのポケットにAirTagが入れられているのを夫が見つけてくれたと、Naderさんはトーク番組「タムロン・ホール・ショー」で説明した。
AppleはAirTagを悪用したストーカー行為を防ぐために、さまざまな対策を講じており、法執行機関と連携してAirTag関連の要請に応えているという。
AirTag悪用対策の中でも特に重要な役割を果たしているのが、不明なAirTagが一定期間にわたってiPhoneユーザーと一緒に移動していた場合に、ユーザーにアラートを送信する機能だ。Naderさんは、誰かが自分を追跡している可能性をiPhoneが教えてくれたことは不幸中の幸いだったと振り返る。AirTagの件は警察にも届けたが、AirTagを入れた人物が分からない以上、警察が打てる手はほとんどなかったと「タムロン・ホール・ショー」で語った。
AirTagを悪用した追跡を阻止するために、Appleは他にも多くの変更を行う計画を発表している。対象となるiPhoneモデル(iPhone 11以降)のユーザーは、年内には「正確な場所を見つける」機能を使って、iPhoneのBluetooth圏内(約10m以内)にある不明なAirTagまでの距離と方向を確認できるようになる。不明なAirTagを見つけやすくするために、AirTagを探す際に流れる音を「最も大きく聞こえるトーン」に変更する調整も行われる予定だ。また、AirTagの購入者が最初の設定を行う際は、画面にプライバシーに関する警告を表示し、同意なしに人を追跡することは多くの地域で犯罪であることを改めて強調していくという。
それだけではない。AirTagは所有者と一定期間以上離れると、移動時に音を鳴らしてユーザーがAirTagを見つけやすくする。Appleはこの音が鳴るまでの時間を発売時の3日間から短縮し、8~24時間の間でランダムに鳴るように変更した。年内にさらなるアップデートを加え、アラートがもっと早いタイミングで送信されるように仕様を変更する予定だ。
また、2021年12月には「Android」用の無料アプリ「Tracker Detect」をリリースし、Androidユーザーが自分の近くにある不審なAirTagを検出できるようにした。
AppleはCNET宛ての声明の中で、ユーザーの安全を真剣に考えていると述べた。「AirTagには、不要な追跡を積極的に防ぐ機能が組み込まれている。この業界初の機能は、不明なAirTagが近くある可能性をユーザーに通知するだけでなく、AirTagの悪用自体を阻止している。自身の安全が脅かされていると感じた時は、地域の警察等に連絡してほしい。Appleは法執行機関と連携し、不明なAirTagに関する情報を可能な限り提供していく」
Appleのプライバシー管理は競合他社よりも厳しい。サムスンのアプリ「SmartThings Find」は、ユーザーが促さない限り、ユーザーの近くに不明な「Galaxy SmartTags」タグを検出してもアラートを発信しない。同社はアラート機能を追加する計画については回答を控えたが、「安全なモバイル体験の提供に全力で取り組んでいる」と述べた。
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