Intelは米国時間3月15日、チップ製造施設「メガファブ」をドイツのマクデブルクに建設すると発表した。このメガファブは、同社が今後10年間に欧州連合(EU)圏で計画する800億ユーロ(約10兆4000億円)の投資の中核となる。Intelはすでに、巨費を投じてオハイオ州でメガファブを建設する計画を明らかにするなど、生産能力を拡大する姿勢を示しており、チップ製造の最前線に復帰する意向だ。
Intelの最高経営責任者(CEO)を務めるPat Gelsinger氏は、今回の投資を発表する動画の中で、「世界には半導体に対するとどまることのない需要がある」と述べた。現在、チップ製造の80%はアジアで行われているが、Intelは欧米での投資で、アジアへの依存度を下げて「バランスと弾力性がより優れた」サプライチェーンを目指すことになる。
同氏によると、Intelはまず、マクデブルクの新たなチップ製造施設に約170億ユーロ(約2兆2000億円)を投じて、2023年に着工し、2027年に製造を開始する計画だという。これによりIntelは、最先端の技術で独自チップを製造できるようになる。これらの工場では、自社開発のチップのほか、2021年に新設されたファウンドリー事業部門「Intel Foundry Services」の拡大を通じ、他社開発のチップの製造にも対応する。
マクデブルクの工場では、建設のための7000人の雇用、操業が始まればIntelによる3000人の雇用が創出される見込みだという。
Intelはまた、120億ユーロ(約1兆6000億円)を投じてアイルランドの首都ダブリン近郊の町リークスリップにある既存の工場を拡張し、規模を2倍にして、新たな製造プロセス「Intel 4」で半導体を製造できるようにする。フランスのパリ近郊にある町プラトー・ド・サクレーでは、従業員1000人規模の研究開発センターを設ける。さらに、ポーランド北部の港湾都市グダニスクにある研究施設を拡張するほか、スペインのバルセロナにスーパーコンピューティング研究施設を新設する。
欧州委員会のUrsula von der Leyen委員長はこれらの投資について、欧州におけるハイテクの未来にとって重要だと称賛した。同氏は動画の中で、「われわれの目標は、2030年までに世界の半導体生産の20%を欧州で行うことだ。今後10年で2倍に成長する見込みの市場において、この目標は現状の2倍に相当する」と述べた。
Intelは2021年、台湾積体電路製造(TSMC)と韓国のサムスンに集中している半導体製造の不均衡を是正する計画の一環として、米国と欧州で生産能力を増強すると発表していた。1月には、200億ドル(約2兆3700億円)超を投じてオハイオ州に2つの半導体工場を新設する計画を発表した。2022年内に着工し、最終的には1000億ドル(約11兆8300億円)を投じて合計8つの半導体工場に拡張する計画だ。
Intelが計画している半導体工場はオハイオ州の2カ所とドイツの2カ所で、当初は比較的小規模だが、今後10年かけて拡張する計画だ。最新の半導体工場は1カ所につき約100億ドル(約1兆1800億円)のコストがかかる。その主な理由は、シリコンウエハー上に超小型の電子部品をエッチングするのに、巨大でコストも非常に高額な「リソグラフィー」装置が必要になることだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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