ロシアによるウクライナ侵攻で高まる「スプリンターネット」の懸念

Stephen Shankland (CNET News) 翻訳校正: 編集部2022年03月09日 08時00分

何が起きているのか

 ロシアによるウクライナ侵攻で、国家のインターネットの基盤とサービスの分裂を指す、「スプリンターネット」と呼ばれる状態が加速している。

なぜ問題なのか

 スプリンターネットにより、個人や企業はインターネットを使いにくくなる。インターネットは人類が発明した強力なコミュニケーションツールであるにもかかわらず、それが弱体化されてしまう。

次に何が起きるのか

 政治的および社会的圧力が、インターネットを利用する一般のロシア人をさらに孤立させる可能性がある。だが、ロシアのインターネットが完全に分断される可能性は低いようだ。

地球
提供:提供:Getty Images

 ロシアによるウクライナ侵攻で、世界に広がるインターネットの基盤に新たな亀裂が生まれている。

 ロシアが隣国ウクライナへの攻撃を開始した2月24日の翌日から、ロシア連邦政府は自国民によるFacebookとTwitterへのアクセスを制限した。一方、Facebook、YouTube、TikTokは、欧州連合(EU)の要請を受け、ロシア国営メディアへのアクセスを制限した。

 ロシア政府はまた、Vladimir Putin大統領が2019年に署名した「Sovereign Internet Law」(インターネット主権法)を行使した。この法律は、ロシアのインターネットを遮断しようとする西側の試みを回避しつつ、国内のネットワーク管理を一元化し、政府がウェブサイトの検閲やSNSの遮断などの措置を講じることを可能にするというものだ。

 一般に「スプリンターネット」(split/splinter+internet=splinternet)と呼ばれる、インターネットの分断化現象は、各国がインターネットをどのように扱うかの違いを反映している。そこには、データ送信のような低層技術から検索エンジンやメッセージングアプリのような上層のアプリまでが含まれる。国ごとに異なる規則が増えるにつれて、人類が創造した最も強力なコミュニケーション手段といえるインターネットが機能しなくなる恐れがある。

 オープンでグローバル、安全かつ信頼できるインターネットの促進を目指す非営利団体インターネットソサエティー(ISOC)の最高経営責任者(CEO)を務めるAndrew Sullivan氏は、スプリンターネット化の流れが続けば、インターネットは「時たま接続できる孤島のような国々の集まり」に取って代わられるだろうと語った。

 インターネットは全体的にはまだ当初の設計通りに稼働している。今や3万2000以上になった、ISPやテクノロジー大手、大学、政府機関などが運営するネットワークの、相互にリンクする集合体だ。メールやInstagramの投稿がこれらのネットワークをどのように通過するかは、テクノロジー標準が管理している。そうしたデータは、光ファイバー回線、無線、銅線ケーブルなどで繋がれたルーターやスイッチの間をホッピングしていく。

 インターネットを発明し、業界で影響力の強い多くの企業を立ち上げた技術者たちは、何年もの間インターネットの分断化と戦ってきた。例えば、ISOC欧州委員会、インターネット技術タスクフォース(IETF)、IPアドレスの割り当てを行う欧州の組織RIPEは、中国が提案した一元化されたインターネット標準に反対した。インターネットのパイオニアたちは、この構想がネットワーク分散化の精神とは正反対だと考えたのだ。スプリンターネットの最も強い兆候は、中国のいわゆるグレートファイアウォールだ。これは、米国のSNS企業や香港の抗議活動に関する情報などのコンテンツをブロックするために中国が使っているインターネット監視・管理システムを指す。

 先週、ドメイン名の管理などを担う非営利団体ICANNは、「.ru」などロシアのトップレベルドメイン(TLD)と同国に関連するSSL証明書の取り消しを求めた、ウクライナの要請を拒否した。ICANNの最高経営責任者(CEO)であるGoran Marby氏は書簡で、インターネットは分散型システムであるため1組織が遮断できるものではなく、さらにICANNは世界的信用を確保するために中立を維持する必要があると説明した。

 だが現在、いくつかの制限はEUなどの自由民主主義組織によるものだ。たとえ善意によるものであっても、地域における変更はすべて、インターネットに新たな複雑さ、コスト、障壁を追加する。

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