今回は、グロービス経営大学院とフライヤー主催による「読者が選ぶビジネス書グランプリ」で、2022年、リベラルアーツ部門賞を獲得した「認知症世界の歩き方」を紹介する。
認知症についての情報は、調べれば豊富に手に入る。しかし、その中に、認知症を抱える当事者の視点で語られたものはどれだけあるだろうか。
著者の筧裕介氏は、認知症にまつわる情報が、医療従事者や介護者からの視点のものに偏り、肝心の当事者の視点が欠けていることに問題意識を持っている。本書は、認知症の当事者視点の情報を発信することを目的に、約100名の当事者へのインタビューをもとに作成されたものだ。認知症を抱える人の気持ちや困りごとが、「記憶をなくすミステリーバス」、「出口にたどりつかない服の袖トンネル」など、旅の難所として旅行記風にまとめられており、自分がその世界の旅人となることで、認知症を自分ごととして理解することができる。
著者は、同じ認知症の症状でも、その背景にあるトラブルは一人ひとり異なるのだと指摘する。本書では、困りごとそのものだけでなく、その背景にひそむ認知機能の障害を細かく分類し、それに応じた対応を紹介している。その人の状態にあわせた生活の工夫を考える際には大きな助けとなることだろう。
認知症の世界は、自分と関係のない世界ではない。本書によれば、それは、少し先の自分、あるいは、自分の大切な人が生きることになる世界だ。その世界では誰もが旅の初心者である。知らない国へ海外旅行に行くような気持ちで、このガイドブックでいつか出発する旅の予習をしておこう。
読者が選ぶビジネス書グランプリは、「読者こそがビジネス書を評価する人であるべきだ」という信念のもと、フライヤーとグロービス経営大学院が毎年開催しているイベント。2月の結果発表後、2022年は全国約1300店舗の書店にて、受賞作品のフェアが開催される。
今回ご紹介した「認知症世界の歩き方」の要約記事はこちら。この記事は、ビジネスパーソンのスキルや知識アップに役立つ“今読むべき本”を厳選し、要約してアプリやネットで伝える「flier(フライヤー)」からの転載になります。
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