アップルを悩ませるストーカーの「AirTag」悪用--業界横断の対策が必要だ - (page 2)

Lisa Eadicicco (CNET News) 翻訳校正: 編集部2022年03月01日 07時30分

 もっとも、サムスンがプライバシー保護機能を提供していないわけではない。Appleと同様に、サムスンもタグのデバイスIDは頻繁に変更しており、Bluetooth信号が長期にわたって追跡される心配はない。ユーザーのデータもすべて暗号化されている。

 Tileの場合、自分が所有していないタグは近くにあっても検出できない。しかし、この仕様は近いうちに変更される予定だ。2022年の早い段階で、相手がアカウントを持っていなくてもTileアプリを使って近くにあるTileタグを検索できる機能「Scan and Secure」がリリースされる。この機能は権利擁護団体と協力して開発されたという。

 しかしサムスンと同様に、Tileのトラッカーも近くにあるタグを検出するためにはまず、アプリ内のボタンを押さなければならない。つまり、検出は自動では行われない。Tileは今後も専門家と相談しながら、この機能を強化していくと述べた。

Bluetoothトラッカーの悪用を防ぐために何が必要か

 AppleとTileはトラッカーの改善に努めているが、プライバシーの専門家によれば、やるべきことはまだ多いという。まずはGoogleと協力し、AndroidユーザーがiPhoneユーザーと同等の保護を受けられるようにすることが急務だと電子フロンティア財団(EFF)のサイバーセキュリティ担当ディレクター、Eva Galperin氏は言う。

 AppleのTracker Detectも、サムスンやTileのシステムと同じ弱点を抱えている。つまり、ユーザー側がアクションを起こさない限り、ユーザーの近くでAirTagが発見されてもアラートは送信されない(iPhoneの場合はユーザーが何もしなくても自動で行われる)。この機能をTracker Detectに追加する計画について、Appleはコメントを控えた。

AppleのTracker Detect
AppleのTracker Detect
提供:Nelson Aguilar/CNET

 独ダルムシュタット工科大学のセキュア・モバイル・ネットワーキング研究所の研究員で、博士課程で学ぶ学生でもあるAlexander Heinrich氏らは、AirTagを検出するためのAndroidアプリ「AirGuard」を開発した。この無料アプリは2021年、AppleがTracker Detectをリリースした12月よりもずっと早い9月に公開された。

 AirGuardには、Appleのアプリにはない機能がいくつか備わっている。例えば、AirGuardはユーザーがアプリ内のボタンを押さなくても、バックグラウンドでAirTagを検出する(ただしアプリが必要とする許可を事前に与える必要がある)。「Google Play」ストアによれば、このアプリは10万回以上ダウンロードされているが、その精度に対するユーザーの評価はさまざまだ。

 「Androidユーザーのために今すぐ何かしなければと思った。こうしたアプリが欲しいという声も多かった」とHeinrich氏は言う。「iOS用の対策はあるのに、Android用には何の対策もなかったからだ」

 Androidユーザーに本格的な保護機能を提供することは、最初の一歩としては良いだろう。しかし、この問題を本当の意味で解決するためには、関係各社が協力し、製品の悪用に関する情報を共有する必要があると、家庭内暴力をなくすための全米ネットワーク(NNEDV)でセーフティーネットプロジェクトを統括するErica Olsen氏は言う。その例として、同氏は2019年に設立された「反ストーカーウェア同盟(Coalition Against Stalkerware)」を挙げる。この組織はストーカーウェアに対抗するための教育や情報を提供しており、Malwarebytes、Kaspersky、Avastといったサイバーセキュリティ企業がパートナーとして参加している。反ストーカーウェア同盟は、プライバシー問題を解決するために競合企業が連携している好例だ。

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