ネタバレ自体は違法ではない--漫画「ネタバレサイト」の問題点を弁護士が解説

 コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は2月3日、漫画の“ネタバレサイト“を運営した法人らを福岡地検に送致したと発表した。多数の出版社の漫画作品を「イラスト掲載は少ないながらも、セリフなどの文字内容や情景をほぼそのまま抜き出し、ストーリーが詳細に分かるよう」に掲載。アフィリエイト広告による収入を得ていたとみられる。

 これに対し、甲本・佐藤法律会計事務所で共同代表を務める弁護士兼弁理士の甲本晃啓氏は、本質的な問題は「ネタバレ」ではなく、ネタバレ自体は違法ではないと指摘。その上で以下のように解説した。

 「著作権は『表現』を保護する制度であるため、具体的な表現であるセリフや文章をデットコピー(コピペ)すれば、複製権の侵害となる。個人の営利性のない場合でも法的評価は同一で、『Twitter』などのインターネットに掲載すれば公衆送信権侵害で違法となる。

 他方で、『作品のストーリー』『あらすじ』を自分の言葉でまとめて人に伝えることは、基本的には違法性がない。ストーリーの内容自体には秘匿性がないので、作品の感想やあらすじを自分なりでまとめてネットでコメントする『記事の斜め読み』などは、問題にならない。

 また、作品やキャラクターの名前を出すことにも違法性はない。特定のセリフについてコメントする必要があれば、著作権法のルールに従ってセリフやコマを引用(無断転載)することも可能だ。しかし、問題はそうではない作品にフリーライドする形の『コピペ』という手法であり、『ネタバレは本質的な問題ではない』ということに十分に注意を払う必要がある」(甲本氏)

 ただし、そのネタバレサイトがあることにより、本やコンテンツが売れなくなるといった因果関係があるような場合は、著作権侵害に当たらなくても営業妨害として民事不法行為に当たることもあるので注意が必要だとも指摘した。

 今回の“ネタバレサイト”運営者らを著作権法違反で摘発した本件は妥当な結論と捉える一方で、「作品のあらすじの紹介は、作者にとってその作品を多くの人に知ってもらう機会でもあるため、『ネタバレ』=悪という短絡的な構図を強く作者が主張するようになると、一周回って表現活動自体を制約しかねない」とも加えた。

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