受験期だが、今どきの中高生はどのように受験勉強をしているのだろうか。以前、スマホで学習中の手元をタイムラプス動画で撮影する学習法「タイムラプス勉強法」をご紹介した。しかし、それだけでなくさまざまな学習にスマホが活用されている。ある高校生に聞いた「自習でもやる気につながる使い方」をご紹介したい。
マイナビティーンズラボの「高校生の勉強法・自習スタイル調査」(2021年10月)によると、自習時に記録として使っているものは「スマホ」が62%で最多となり、「ルーズリーフ」(54%)や「ノート」(53%)を上回った。
また、勉強や受験における悩みや課題を解決するために見るものについて聞いたところ、「Googleなどで検索」(45%)、「YouTube」(41%)という結果に。「Instagram」(24%)、「Twitter」(14%)、「TikTok」(8%)などという回答も見られた。
Googleは言うまでもなく、わからないことを検索するためだ。YouTubeは、学習や教育に特化したYouTuber動画が活用されている。「とある男が授業をしてみた」チャンネルを運営する葉一さんなど勉強系YouTuberは多く、「学校の授業よりわかりやすい」という生徒もいるほどだ。
もう1つ、「YouTubeには『Study with me』企画が充実している」という声もあがっていた。「Study with me」は、冒頭でご紹介した高校生に聞いた学習法だ。その名の通り、「一緒に勉強しよう」というもので、ただひたすら勉強しているところを撮影した動画を投稿している。視点は固定で主に勉強主または手元などを映しており、時計が映っていることも多い。
投稿には、撮影済みのものだけでなく、ライブ配信で投稿しているものもある。配信と時間を合わせて勉強すれば、ともに勉強している気分が味わえる上、緊張感やモチベーションが保てるとして、海外、日本を問わず人気がある学習方法なのだ。
この勉強法は、海外では2019年頃よりZ世代を中心に流行している。多くの高校生や大学生が、自分の学習している様子をライブ配信し、フォロワーとともに勉強する空間を作り出しており、Googleでの検索数も増えているという。
ニューヨーク在住で救急医学を勉強する女性が運営する「TheStrive Studies」チャンネルは、登録者数34.6万人、累計再生数は2400万回以上。法学系の学生が運営する「WaysToStudy」は、勉強系ライフハックやモチベーションアップのための動画も投稿して人気となっており、チャンネル登録者数66.5万人、累計再生数は2700万回に上る。
「○○勉強」の常で、合格や資格取得などの目的が達成された後は動画は投稿されなくなることが多い。このようなチャンネルも、多くは新規投稿がなくなっている。しかし、コメント欄では今も「○○に向けて勉強している。おかげでいままでで一番勉強できた、ありがとう」「おかげで集中して課題を仕上げることができた」「あなたの動画を見ながらもう4年も一緒に勉強している」などの感謝のコメントが寄せられ続けている。
このようなアーカイブ動画をBGM代わりに流しながら勉強している人が多いことがよく分かるだろう。
「タイムラプス動画」は終了後に記録代わりとして投稿するものであり、主に自分のモチベーションにつなげたり、スマホを絶って集中して学習するためのものだ。一方、「Study with me」動画は、自分だけでなく見ている人もやる気につながるため、「これから学習にしたい/しなければならない」学生に人気が高いというわけだ。
Instagramでは、「#studywithme」は254万件、「#studywithmevideo」が1.6万件など多数投稿されている。学習机や文房具などの写真のほか、BGMが流れたり、ひたすらペンを走らせる音が聞こえる動画も多い。こちらは、タイムラプス勉強法に近い使い方が多めだ。
一方、YouTubeでは、投稿動画の時間が長いのが特徴だ。1時間程度のものが多いが、受験生YouTuberがライブ配信をしたり、中には6時間にもわたるアーカイブ動画が見られるようになっている。どれもただひたすら勉強している動画だ。
勉強系YouTuberの葉一さんも、時折「自習室」ライブをすることがある。他の動画のように勉強を教えるのではなく、自分が勉強している様子をライブ配信し、「一緒に勉強しよう」と呼びかけているのだ。このような動画のニーズが高いことがよく分かるだろう。
冒頭の高校生は、自分ひとりではなかなか集中できないという悩みを持っていた。LINE通話で友だちとつながりながら学習したこともあるが、塾の時間などがずれており、どうしても一人きりになる時間ができてしまった。そこで、この学習法を見つけて、最近はずっとBGM代わりに流しながら学習しているという。
「学校の図書館とか塾の自習室に近い使い方ができる。友だちと時間が合わなくても他の誰かと勉強したりつながっている感が出るから、自分には合っていた」という。コロナ禍で外出を避けたい受験生にぴったりというわけだ。
学生たちは、次々と新しいツールを活用し、使いこなしている。大人世代も集中できないときは、若者たちを見習ってこのようなやり方を取り入れてみてもいいかもしれない。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/
Twitter:@akiakatsuki
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