伝説的なエンジニアであり、ミュージシャンでもあるSteve Albini氏はシカゴで自身のレコーディングスタジオを経営しているが、サンプラーとドラムマシンが初めて影響を及ぼすようになった1980年代後半に、Abbey Road Studiosで経験を積んだ。Albini氏は米CNETに対して、「Abbey Road Studiosのような場所は、実際には休眠状態のようになっていたので、予算重視の利用者を引き付けるために、料金を下げ始めた」と語った。
Albini氏によると、自分のスタジオはどんな変化にも耐えられると信じているが、完全にデジタル化された未来での大型施設の行く末については、疑念を抱いているという。
「正直なところ、大規模なプロ組織向けスタジオ施設が今後も運営を続けていけるのかどうか私にはわからない」とAlbini氏。「誰かがバンド仲間に対して、『自宅でタダでできるのに、なぜお金を払ってスタジオでレコーディングする必要があるのか』と言っても、私はその人を責めることはできない」
オーディオマニア向けの「The Audiophiliac」シリーズなどの記事を米CNETに寄稿しているSteve Guttenberg記者は、ニューヨークのレコード会社Chesky Recordsで長年レコーディングに携わってきた経験を持つ。Abbey Road Studiosのようなレコーディングスタジオが、今後どうやったら生き残れるのか尋ねたところ、Guttenberg氏は、「生き残れない」と答えた。
Abbey Road Studiosで働く人は、もっと楽観的な見方をしている。オーディオ製品の責任者であるMirek Stiles氏は、業界はこれまでも変化を経験してきたし、トレンドに後れをとらないようにすることも自分の仕事のうちだと言う。Stiles氏は、Abbey Road Studiosが、ホームレコーディングと避けられないAIによる作曲の台頭の両方と共存できる未来を思い描いている。
「1950年代に、音楽は細かく切り刻まれて編集されるようになり、作曲家は『それは私の音楽ではない』と話していた。その後、1980年代にMIDIが登場し、サンプリングが行われるようになると、実際に訴訟沙汰になった」とStiles氏。「ストリーミングの登場を20年前に誰が予想できただろうか。20年後には、他の新しいものが登場しているかもしれない」
ミュージシャンのAndrew Falkous氏は、レコード会社と何度も騒動を起こしてきたが、Abbey Road Studiosのマスタリング施設を使用してもいる。Falkous氏は、「まともな音楽は何年も前に音楽業界に降伏したと思う」と話す。「私にはどうでもいいが、残るのは、スーパースター、そして、インディーズのバンドだけだ。それも、ものすごく独立したバンドだ」
Falkous氏は、ポップとロックの違いは、チーズとタマネギの違いのようなものだ、という謎めいた例えを使った。
「人工のチーズ業界には何の興味もない。これまで標準以下の品質のタマネギをたくさん消費してきたが、自分は大のタマネギファンだ」(Falkous氏)
50年経った今でも、The Beatlesほどの成功を手にしたアーティストはいないが、それでも「ポップスター」という存在は生き残っている。ストリーミング、サンプリング、オートチューンといった新しいテクノロジーの影響を受けて、音楽業界は絶えず進化している。AI音楽も進化するにつれて、音楽制作に途方もなく大きな影響を与えるようになるだろう。その一方で、昔気質のレコーディングスタジオやアーティストは適応を迫られることになる。
歴史を振り返ると、どの世代も「それは正しい作曲方法ではない」と言われてきた。それは、ベースをギターのように弾いてGet Backを作曲したPaul McCartneyも、次世代のヒットメーカーたちも同じだ。彼らはAIを使って、これまで知られていなかった驚くべき新しいサウンドを切り開くだろう。そして間違いなく、その中からグラミー賞受賞者が生まれるはずだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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