本年も、Appleを核としたテクノロジー業界の定点観測、Appleニュース一気読みをよろしくお願い致します。
Appleニュース一気読みホリデーガイドとして、各製品・サービスカテゴリをまとめていく。まずはiPhoneからだ。
Appleは2020年モデルのiPhone 12では、2つの重要なアップデートを施した。その結果、2021年、それまで伸び悩みも指摘されてきたiPhoneは息を吹き返し、外出が抑制されてきたコロナ禍からの回復の波に乗って、2021年第2四半期(1〜3月)に前年同期比65.5%増を筆頭に、それまでの売上高を大幅に上回って推移してきた。
一つ目のアップデートはフルモデルチェンジだ。2014年にiPhone 6で丸みを帯びた側面を持つ造型を打ち出し、iPhone 11シリーズまでその意匠を維持してきた。つまりiPhone 12は5年ぶりのデザイン刷新となり、iPhone 4からiPhone 5sまで用いてきた側面が垂直に立ち上がるシンプルなデザインに戻った。
特に反応しているのが中国市場で、大中華圏での売上高は前年同期比50%以上を意地し続けており、特にiPhone・Apple Watchの販売が好調だとの指摘が、決算発表ごとに伝わってくる。
デザインの変更と共に大型化も施しており、この点も戦略として非常に成功している。前述のiPhone 6は、4インチから最大5.5インチへと画面拡大を行い、Appleの中国市場におけるポジションを固めたモデルだった。iPhone 12シリーズでも、大画面化を推し進め、中国での低迷を挽回を実現している。
二つ目のアップデートは5Gだ。iPhone 12から世界向けのモデルで一挙に5Gをサポートした。それまでQualcommと係争し、Intelモデムを採用してきたAppleだったが、2019年に和解しており、2020年発売のiPhoneからQualcommチップで5G対応を果たしている。
Tim Cook CEOは2021年第3四半期決算の電話会議で、「5G普及は序盤」との見方を示した。5G契約は今後5年間世界中で成長を続けるとの予測だ。これは、新たに5G対応のスマートフォンを購入する人が絶えず現れ続けることを意味している。Appleが15%というスマートフォン販売の世界シェアを維持していくだけで、販売を伸ばせると考えられる。
このようにして、向こう数年間、5G対応のiPhoneはマーケットシェアの維持と拡大に取り組みながら、成長する道筋を立てることができた点は、Appleの2021年にとって重要な道しるべとなっている。
その一方で、Appleも含めた世界中の企業が影響を受ける半導体不足の問題は今後も長引くと考えられる。Tim Cook CEOは2021年第4四半期決算(7〜9月)の電話会議で、COVID-19と半導体不足の問題による売上高の抑制を指摘した。前者は収まりつつあるが、後者は引き続き影響を受けており、iPhoneとiPadの影響が特に大きくなると深刻に捉えていた。
AppleはAチップやM1など自社設計のチップが足りないという自体は今のところ観測できていない。しかしそれ以外のパーツの遅延は、Appleも同様に影響を受ける。またオミクロン株の感染次第では、再び工場の閉鎖などが考えられるため、この冬も引き続き予断を許さない状況、と見ることができる。
2021年モデルのiPhone 13シリーズは、前年モデルを踏襲したデザイン。5.4インチ、6.1インチ、6.7インチの3モデル構成で6.1インチはスタンダードとプロの2モデルを用意する2020年のモデル戦略を維持する形となっている。
iPhone 13シリーズのフォーカスはシンプルで、引き続きサポートしている5Gに加え、カメラの進化、バッテリー持続時間向上が主要メッセージだ。そう言われると今までも繰り返されてきた話で、魅力が薄いようにも感じる。ただ、マーケットで求められていることに素直に応えるなら、このメッセージは間違いない。
カメラについては、全モデルでセンサーサイズを拡大させており、iPhone 13も、前年のiPhone 12 Pro Maxに搭載されたセンサーシフト式の大型センサーを採用。iPhone 13 Proシリーズではさらに大きなセンサーを備え、暗所性能向上と写真の色やキレに磨きをかけた。
ビデオはシリーズを通して、リアルタイムに背景をぼかすシネマティックモードをフルHDまでサポート。さらにProモデルでは1分間に6GBのデータ量にもなる4KのProRes撮影が可能になった。
バッテリー持続時間は、モデル全体を通じて向上させている。特にiPhone 13 Pro Maxでは、ビデオ再生が28時間に到達しており、前世代から8時間も向上。テザリングを多用しながら仕事をする人にとっても、1日充電なしで十分切り抜けられるほどロングライフを実現した。
これらの進化はいずれもA15 Bionicの画像処理能力や省電力性に依拠しており、簡単で単純な進化でありながら、Apple自社設計のチップがなければ実現できない点は、他社からすればマネできない、厳しいラインを攻めている。
カメラで言えば、iPhone 13 Proのアップデートは大きなポイントだ。2020年モデルのiPhone 12 Proでは、6.1インチサイズと6.7インチサイズでカメラが差別化され、画面サイズがより大きなiPhone 12 Pro Maxの方が大きなセンサーとセンサーシフト式手ぶれ補正という2つのアドバンテージとなっていた。
iPhone 13 Proシリーズではカメラの仕様が統一。結果、6.1インチモデルは2020年モデルから比べて2サイズアップした広角カメラのセンサーを備え、センサーシフト式手ぶれ補正の恩恵も受けられるようになった。iPhoneの最高カメラ性能を求めるとしても、2021年モデルからは最大画面サイズではなく、扱いやすいスタンダードな6.1インチを選べるようになった点が重要なポイントだ。
しかし2021年モデルのiPhoneで最も進化を感じたのは、5.4インチのiPhone 13 miniだった。
前述の通り、iPhone 12 Pro Maxと同等のセンサーシフト式手ぶれ補正を備える大型センサーの広角カメラを備え、ディスプレイも標準輝度で最大800ニトまで引き上げられた。その取り回しの良さからも最強のスナップカメラと言って良さそうだ。もちろんシネマティックモードやポートレートモードも利用でき、最新のiPhoneのカメラ体験を存分に楽しめる。
加えて、iPhone 12 miniの弱点だったバッテリー持続時間は、実利用で1日補給なしで過ごせるようになった。こうなると、気軽にポケットに入れることができ、握り心地も良く、MagSafeアクセサリとの統一感も高い、5.4インチのiPhone 13 miniは、今回のiPhoneシリーズの中で、最も進化を享受したモデルと結論づけることができる。
次回は、iPad miniについてお伝えしたい。
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