スマートグラスは2022年も発展途上--各社の製品を試して感じる課題 - (page 2)

Scott Stein (CNET News) 翻訳校正: 編集部2022年01月06日 07時30分

SnapのARグラスが指し示す未来:屋外での使用

Spectacles
Snapの「Spectacles」
提供:Scott Stein/CNET

 先頃、Snapが開発者向けに展開しているARグラス「Spectacles」をテストする機会を得た。そこで12月の晴れた日、Spectaclesをつけたまま自宅の裏庭を30分ほど走ってみた。Spectaclesはワイヤレスで動作し、実際の屋外環境に3D効果を重ねて投影できる。現在、市場に出ているARグラスのほとんどは屋内での使用を想定しており、日差しの強い場所やコントラストの高い環境では動作しない。しかしSpectaclesはディスプレイが非常に明るいため、室内でも屋外でも使用できる。現在、Qualcommの他のパートナー企業から発売されているARグラスと違い、接続ケーブルも必要ない。

 もちろん、マイナス点もある。まず視野がとても狭いので、3Dエフェクトは視界のすぐ前の小さなボックスにしか表示されない。バッテリー稼働時間も30分と非常に短い。Spectaclesはあくまでも開発者のための製品であり、開発者が現在のスマートフォンやSnapchat等のAR対応アプリよりも没入感のある、ARのアイデアを生み出せるよう支援することを目的としている。「Magic Leap」や「HoloLens 2」といった本格的なARヘッドセットの大きさを考えると、Spectaclesの利点は明らかだ。

 Spectaclesは機能しているが、制限事項も多いため、消費者市場での成功は今のところ望めない。そして繰り返しになるが、普段のメガネに重ねては装着できないという問題がある。

業務用ヘッドセットは今後も増え続ける

HoloLens 2
HoloLens 2
提供:Scott Stein/CNET

 当面は、オフサイトの現場作業や工場での利用に適したハンズフリーのヘッドセットが、ARグラスにとって最大のターゲットの1つであり続けるだろう。Magic Leapは当初、クリエイターが日常的に使用できるデバイスとしてARグラスを売り込んだが、現在は企業向けにも軸足を向けている。同社の第2世代のARグラスは、Microsoftの「HoloLens 2」シリーズのような、きわめて実用的な製品となりそうだ。場合によっては、普段使いのメガネの上から簡単に装着できるものになるかもしれない。スマートグラスを長年手がけてきたVuzixなどの企業も、仕事の現場で同じような役割を果たせるARグラスを開発している。

 筆者が2021年春に再び装着する機会を得たHoloLens 2で最も気に入ったのは、やはり自分のメガネをかけたまま利用できる点だった。これなら、メガネを外す必要はない。

Metaの次のメガネは進化するかも(おそらくAmazonのメガネも)

Ray-Ban Stories
提供:Scott Stein/CNET

 Metaの初代Ray-Ban Storiesは驚くほどシンプルで、画期的なテクノロジーが使われているようには見えなかったが、足掛かりにはなったかもしれない。見た目も意外なほど普通のメガネにそっくりだったが、それこそがMetaの考える出発点だったのだろう。オーディオ機能に特化したEcho Framesを作っているAmazonなどの企業も、そうした製品を足掛かりに、時間をかけて機能を加えていくのかもしれない。

 次に来るのはディスプレイ機能だろうか。Metaが次のメガネでそれを実現するとしたら、今までにないタイプのレンズを使うことになるだろう。あるいは、オーバーレイを搭載するかもしれない。実際、導波管(目に画像を映し出す技術)などのディスプレイ技術を搭載したスマートグラスはすでに存在している。もっとも、この状況は、度付きレンズを簡単に装着できるメガネの実現がさらに遠のく可能性をも示している。Metaは日常的に使えるメガネの開発を目指しているが、もしそうなら、先に筆者が述べたように、店頭で簡単にサービスを受けられるようにすることから始めるべきかもしれない。

スマートグラスの操作性

Metaが構想するスマートグラス
Metaの将来のスマートグラスではリストバンドによる入力を構想しているが、2022年の段階ではどうだろう?
提供:Meta

 ARにはマウスもトラックパッドもキーボードもなく、共通規格のコントローラーもない。多くのVRヘッドセットには、ゲームパッドを2つに割ったようなデュアルコントローラーがついてくるが、ARヘッドセットの場合はハンドトラッキングか、スマートフォンのインターフェイスを利用するかの二択となることが多い。しかも、どちらも理想的とは言えず、うまくいっている時でさえぎこちない。MicrosoftのHoloLens 2は、ホログラム上で指をピンチするか、エアタップすることで操作できるが、普段使いのデバイスとしては十分ではないと感じる。Magic Leapなど、一部のARヘッドセットには専用の小さな携帯型コントローラーが付く。インターネットと接続したリングを使用する機種も見たことがある。

 つまり、スマートグラスの操作方法はまだ確立されていない、ということだ。Meta(Facebook)は手首に装着した専用機器で指の動きから神経信号を読み取り、正確なコントロールを実現しようとしているが、この技術が2022年中に実用化される見込みはない。Metaは、この手首装着型のコントローラーに先立って腕時計型のデバイスを開発するかもしれない。Appleから登場すると期待されるVRヘッドセットも、(想像の域を出ないが)操作するのに「Apple Watch」を使う可能性がある。いずれにしても、2022年はスマートグラスをどう操作するかが未解決の最重要課題となるだろう。

メタバースと視力の関係

Ray-Ban Storiesを着けた筆者
提供:Josh Goldman/CNET

 ここまで来れば、メタバースを目指す企業の多くがヘッドセットを使わない体験を提供しようとしている理由がわかるだろう。今のところ、日常的な利用に耐えるARグラスはなく、現在入手可能なARグラスのほとんどはメガネを必要とする私の視力では使えない。私の近視は確かに極端な例かもしれないが、世の中にはさまざまな顔の形や視力の人がいる。そのすべてにどう対応していくのか、答えはまだ出ておらず、今後も試行錯誤が続く。

 少なくともVRグラスの場合は、メガネをかけたまま装着できるものがいくつかある。しかし私が使っているメガネは幅が広いので、VR用にもっと幅の狭いメガネを新調しなければならない。これは負担が大きいし、使える場所も限られる。メタバースでは、このような限定的なテクノロジーは支持されないはずだ。スマートグラスの開発は2022年も続く。つまり、少なくとも当面はVRヘッドセットの進化がメタバース、さらには複合現実(MR)の未来を定義することになる。

 今後の開発では、スマートグラスと通常のメガネを共存させる方法もぜひ考えてもらいたい。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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