サステイナブルな未来とは--ARも取り入れたエンターテイメントメディア芸術公演「FashiComm」 - (page 2)

世代を超えて受け継いでいける着物から考えるサステイナビリティ

 ショーのタイトルにあるトラベラーのほか、マッシュアップ、スレイジアン(クリエイティブなアジア人)、エンパワーメントの4つをキーワードに製作したと話したのは、石坂美由紀氏らのチーム。着物素材を元に、インドネシアの伝統的なテキスタイル「ウロス・バタック」や、インドネシアの海の珊瑚礁を彷彿とさせる色合い、日本の更紗生地などを取り入れたもので、目に鮮やかな、しかし決して前衛的すぎないファッションが特徴的だった。

デザイナーの石坂美由紀氏
デザイナーの石坂美由紀氏

 石坂氏は、自ら「Muskaan」というヴィンテージの着物素材を元にした洋服ブランドをプロデュースしている。すでにできあがっている着物をいったんほどき、それを洋服にアップサイクルして新しいファッションを提案するものだ。着物の図案や織りのなかには「伝統的なスピリチュアリティが込められている。そこには今の生活では失われてしまったような循環型の社会、環境を感じる」とし、同氏のデザイナーとしての仕事は「それを読み解いて深掘りしていくという作業」だと話す。

石坂氏らのチームがショーで披露したファッションのCGイメージとラフ
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石坂氏らのチームがショーで披露したファッションのCGイメージとラフ

 また、キサブロー氏が率いるもう1つのチームは、「いかに未来をポジティブに生きるか」などをテーマにした。着物をベースに、「朝に飲む鶏スープに描かれている鶏の絵」あるいは「闘鶏」など、鶏をモチーフにしたインドネシアならではのテイストを盛り込んだ和装をメインに披露していた。

キサブロー氏
キサブロー氏

 キサブロー氏は、100年近く続く着物仕立て屋「岩本和裁」の4代目。同氏は着物の良さについて「リサイクルを前提にしていて、一度着物にしたものでもほどいて作り直せる」ことだと話す。身長が違っても、あるいは世代が違っても、仕立て直すことで着られるのは「洋服にはなかなかできないこと。着物の合理的な構造に美しさを見いだしている」と魅力を語る。

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キサブロー氏らのチームがショーで披露したファッションのCGイメージとラフ

 一方、今回のショーを鑑賞して、「若いクリエイターのエネルギー、パワーを感じることができた。(ファストファッションの台頭などによって)世界のファッションから(地域の文化的な)カラー、パターンがなくなってきているが、アジアにはまだそれが息づいている」と感想を述べたシーラ・クリフ氏も、着物研究家になるほど着物の魅力にとりつかれた1人。

着物研究家・教授 シーラ・クリフ氏
着物研究家・教授 シーラ・クリフ氏

 「着物を最初にひと目見て、テクスチャー、シルクの輝き、軟らかさ、西洋のファブリックにないデザイン」に惹かれたという同氏。三次元的な作りであることや、作られた場所とのつながり、作り手と着ている人との関係性なども着物において重要な要素になっている点も他にはない特徴だとする。自身がこの日身に付けていた着物も100年前のものだと打ち明け、世代を超えて着ることができる着物の素晴らしさを説いた。

サステナビリティの実現のために1人1人が心がけるべきこと

 ただ、近年では大量の廃棄物を生み出すファッション産業が環境破壊の一因になっていると批判を浴びることもある。それについてどう考えているかと問われたヌニン氏は、「たしかにファッション産業はフードロスのように環境に悪影響を与えているところもあるが、ファッションは作り直すこともできる」とし、リサイクルやリユースがしやすいものでもあると指摘する。実際にシーラ氏が100年以上前の着物を着ていることにも改めて触れ、「再構築して新しいものに作り直すことが環境を守ることにつながるのではないか」と訴えた。

インドネシア特命全権大使夫人 ヌニン・アクマディ氏
インドネシア特命全権大使夫人 ヌニン・アクマディ氏

 サステナビリティに対する意識がますます強くなっている社会で、消費者1人1人が環境を守るためにどうすればいいのか。「下着以外は店では新しいものを買わないようにしている」と切り出したのはシーラ氏だ。古着屋で服を購入することはあるが、その時も「自然に戻る素材であること」を重視しているという。服に多く用いられているポリエステルなど石油由来の素材を減らすべく「蜘蛛の糸などのたんぱく質から繊維を作る研究」にも期待しているが、「必要以上に買わない」ことが大事なことだとした。

 キサブロー氏は、そのような無駄を減らすという観点からも着物にメリットがあることをアピール。一般的に「服は買いに行くもの」という意識があるが、「着物は単純な作りなので、自分で(仕立て直して新しい服を)作ることもできるんじゃないかと思っている」と同氏。店で購入して資源をいたずらに消費するのではなく、家庭で「作る」ことを当たり前にすることで、自然とサステイナブルな社会を目指せる方法もあるとした。

 石坂氏は、ウェブサイトで展開したバーチャルファッションを引き合いに、今や「テクノロジーの力で誰もがデザイナーになれる」世界になっているとし、「自分で作ってみるのはすごく大事」とキサブロー氏の意見に賛同する。バーチャルファッションが今後さらに発展していくことで、いずれは「服を着ることの意味が変わっていくだろう」とも予測する。それによって人々の服との付き合い方も変わることで、必要以上に消費しない世の中になっていく、ということも考えられそうだ。

 最後、モデレーターを務めたSCUAD代表の知夏七未氏は、バーチャルファッションが必ずしも地球に優しいファッションの正しいあり方とは限らないかもしれない、と断りを入れながらも、「テクノロジーと人の力を使って、世界とつながりながら、ファッションのあり方をみんなで考えていきたい」と述べ、イベントを締めくくった。

モデレーターを務めたSCUADの代表 知夏七未氏
モデレーターを務めたSCUADの代表 知夏七未氏

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