親子ワーケーションで地域と都会の課題を解決する「EduWork Trip」--育児と仕事どちらも諦めない仕組み

藤井涼 (編集部) 藤川理絵2021年12月25日 10時33分
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 親子ワーケションに特化した集客・販売サービス「EduWork Trip」が12月にリリースされた。親子で地域に滞在して地元との交流を図りつつ、親がいつもの仕事をするそばで、子どもは地域体験を通じた学びを得て成長できるというサービスだ。

 EduWork Tripを手がける、凸版印刷 地域活性化事業開発チームの小出麻由氏に話を聞いた。2015年、自身が通っていた小学校が廃校になり、「地域が死にかけていくことに、ものすごく焦りを感じた」ことをきっかけに、地域活性に取り組み始めたという。地域でのプロジェクトを推進すると同時期に、妊娠、出産を経験。1人の母として、子育てと仕事の両立を模索する経験も、新規事業開発に生かされたという。

凸版印刷 地域活性化事業開発チームの小出麻由氏
凸版印刷 地域活性化事業開発チームの小出麻由氏

親子ワーケーションで地域と都会の課題を解決

 小出氏は、「自分が母になったことで、都市の子育て世代の課題が、自分ごとに変わった」と、地域活性の取り組みを振り返る。調べてみると、子育て世代の半数以上が、子どもに対しても、職場に対しても、罪悪感や劣等感を抱いていることが分かったという。「仕事に関しては圧倒的に女性の方が、でも実は男性も、子どもと一緒にいる時間がないことで罪悪感を感じていた」(小出氏)

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 そこで生まれたのが、働く子育て世代が抱える課題を、地域の資源を生かして解消し、その営みが地域にとっては、経済活動の促進や関係人口の創出につながるという仕組み、EduWork Tripだ。

 働く親には、働くことと子どもの教育をどちらも諦めずに両立できる選択肢の1つとして、「教育親子ワーケーション」を提案している。親子ワーケーションを企画したい自治体向けには、ツアーの造成から集客、販売までを支援する。いわゆるマーケティングの4Pを、親子ワーケーションの分野で全てまかなっていくという。

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 EduWork Tripがバックキャストとして、目指す未来は2つ。1つは、どこで生まれたとしても地域の隔てなく、子どもたちが職業の選択肢を自ら創れる社会を実現すること。子どもたちが大人になって職業選択について考えるとき、地域格差がない状況で自由に選べる社会を目指すこと。

 もう1つは、地域住民が地域に誇りを持ち、都市の人と関わりながら、継続して地域経済が循環している状況を作ることで、地域に住む子どもが多様性を知り、しごとに関する学びを得て、自らしごとを創出するスパイラルを形成することという。

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実証実験から得た子どもと大人両方からの気づき

 EduWork Tripリリースに先がけて、2020年度に長野県飯綱町で行った実証では、大きな発見があったという。この実証の参加者は凸版印刷の従業員と、提携メディアである「いこーよ」読者モニターで、「初めて飯綱町を知った」という人ばかりだったが、4泊5日のワーケーション終了後には、飯綱町は「愛着のある町」に変わっていたのだ。

 好評の理由の1つは、非日常のなかに日常を落としこむゆえの気づきだ。平日、ワークスペースで仕事をしながら窓の外を覗くと、子どもたちが遊んでいる姿が見える。仕事と子育てが物理的に分断している普段とは違って、大自然の中で我が子が地域の子どもたちと交流しながら、のびのびと過ごして成長する姿を日常的に見られたことは、とても喜ばれたという。

2020年度に長野県飯綱町で行った実証の様子
2020年度に長野県飯綱町で行った実証の様子

 それから、 “仕事脳”を持ちつつ地元の方と交流するからこその刺激。自分の仕事を思い浮かべたまま地域に入り、地域の方が頑張っていることや抱えている課題を聞くことで、「自分の会社の仕事を通じて、地域に対して自分は何ができるかを考え始めた」という参加者が複数いたという。

 さらに、子どもたちからのリアルな声も、サービス企画に生かされたという。小出氏は、「夏休みなどの長期休暇中に学童に通っていて、「私の夏休みはどこに行ったんだろう?」と思っている子どもたちの声もすごく聞こえてきた。過疎化が進む地域の子どもたちにしても、小さなコミュニティなので、お友達が10人しかいないという状況もあって、都会の子どもたちと交流することで多様性を知っていくことにもつながる」と言う。

 親子ワーケーションは、日本社会における地域間の教育格差の解消につながる可能性を秘めている。

2022年は「B2B」への展開も見据える

 まずはB2Cで始まったEduWork Tripだが、2022年以降はB2Bへの展開も予定している。長野県飯綱町での実証では、他部署の従業員同士が、子どもを介することでお互いの仕事の話を始める“副次効果”も見られたそうで、小出氏は「子どもを介すると親同士も交流しやすい。EduWork Tripでの社内交流や社外交流も、1つの目的として視野に入れている」と明かした。

 いまコロナ禍で、リモート対応にまつわる労務管理が一気に進み、ワーケーションのビジネス視点での有用性も認知されつつある。けれども、単身であればすぐに行けるワーケーションも、子どもがいるとなかなか行けないため、企業として制度導入しづらいという側面もある。EduWork TripをB2Bサービスとして提供することで、こうした課題感を持つ企業の受け皿になることを狙う。

 「今後は、リゾートホテルなどとのプログラム策定を広げてツアー拡充を図りつつ、ツアーを紹介・販売するプラットフォームを整備してB2Bへの啓蒙も進める。将来的には、学童や習い事など、B2B2Cへの広がりも視野に入れて展開していきたい」(小出氏)

 なお、EduWork Tripでは、2022年の2月に長野県信濃町の斑尾高原で「スキーが大好きになる!!冬の親子で教育ワーケーション」、福島県北塩原村で「裏磐梯をたのしく冒険SDGs!親子で教育ワーケーション!」、3月に同じく長野県信濃町の斑尾高原で「スキーが大好きになる!!春休みの親子で教育ワーケーション」と、静岡県伊豆の天城高原で「地理好き集まれ!!春休みの親子で教育ワーケーション」を開催する予定だ。すべて3泊4日で、参加人数は親1名、子1名となる。

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