NTTデータ経営研究所は12月6日、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが提供する「NTTコム リサーチ」登録モニターを対象に実施した、「地方移住とワーケーションに関する意識調査」の結果を公表した。
調査は、コロナ禍によって、職場への通勤を前提とせず、働く場所に捉われないテレワークなどのワークスタイルが注目を集める中、首都圏を中心とした都市圏に居住・就業している人に対して、より都心から離れた郊外や地方への移住と移住後のワークスタイルに対する意識について聞いたもの。また、観光地やリゾート地においてテレワークなどを活用して働き、同じ場所・地域で余暇を楽しむ「ワーケーション」に対する意識や実施意向・抵抗感などについても調査した。
同調査によると、現在都市圏に居住・就業している正社員のうち、地方移住(郊外を含む)に関心があるとした回答は、全体の3割弱(27.9%)。3割弱のうち、1割強(12.9%)はコロナ禍を機に地方移住に関心を持ったと回答しており、コロナ禍を機に地方移住に関心を持つ層が2倍弱に増加したと考えられるという。地方移住に関心がある人のうち、約半数(47.6%)は移住に向けた検討・準備を行っていると回答しており、具体的な行動を開始しているという。
また、地方移住先の選定要件としては、出身地など、自身に縁のある地域であることよりも、自然環境の豊かさや住宅費、利便性を重視している傾向が見られたという。同研究所はこの傾向について、地方に移住したい一方、生活レベルを維持しつつ都心への交通については一定の利便性を保っておきたいという意図が見えると解説する。
移住の候補地となる都道府県を3つまで挙げてもらったところ、一都三県(東京都内23区外、千葉県、埼玉県、神奈川県)のほか、長野県、静岡県、北海道を挙げる回答が1割超となっており、北海道を除けば、東京都心への(静岡県、長野県は新幹線での)通勤圏となる地域が多く挙げられたという。
同調査では、地方移住に関心がある人に対して、移住後の就業に対する意向もリサーチ。「主にテレワークを行いながら現在の職場での勤務を続けたい」とする回答が最多の4割超(44.4%)となり、移住後はテレワークを前提としつつ、今の勤務先で働き続けたい意向を半数近くの回答者が示したという。
移住の検討にあたって事前に体験したいことについても聞いたところ、4割超が「先に移住し、就業している人への相談」に加えて「サテライトオフィス等、テレワーク勤務できる施設の確認・体験」を挙げており、移住先におけるテレワークでの就業を見越してその勤務環境の充実を確認したい意向がみえるという。
一方、移住後における中長期的なライフプランについては、「移住先の地域に永住したい」とする回答は2割強にとどまっており、「移住先の住み心地により、他の地域に転居するか判断したい」、「ライフステージが変化したら、他の地域に転居するか判断したい」で5割超を占めたという。この結果から、地方移住に関心を持ちつつも、必ずしも永住を前提とせず、今後の環境変化に応じて転居を検討したいと考えている層が大半を占めていると考察している。
観光地やリゾート地においてテレワークなどを活用して働く「ワーケーション」に関する認知・経験について、「ニュースやテレビ等で“ワーケーション“という言葉を見聞きしたことがない」という回答は全体の約14%にとどまり、ワーケーションが広く社会で認知されつつあることが示唆されたという。一方で、実際にワーケーションを経験した回答者は約7%にとどまり、ワーケーションの実施には依然として大きな障壁が存在すると考えられるという。
NTTデータ経営研究所は、ワーケーションが広く認知される一方、ワーケーションに対する不確かな知識によって偏った印象評価がなされていると仮定し、ワーケーションに関する知識の有無に基づくワーケーション印象の差異も調査した。
調査では、「ワーケーションという言葉を見聞きしたことが無い」および「ニュースやテレビ等でワーケーションという言葉を見聞きしたことはあるが、どのようなものかはよく知らない」と回答した人を「知識なし群」、それ以外の「見聞きしたことある」などの人を「知識有り群」と定義し、ワーケーションに関する知識の有無に基づくワーケーション印象の差異を評価した。
結果、複数のワーケーション印象において、知識の有無による有意差が認められたという。具体的には、ワーケーションに関して他者に対して説明できる以上のレベルの知識・経験を有する人(知識有り群)は、そうでない人と比べて、ワーケーションに関してよりポジティブな印象を有しており、かつ、「ワーケーションは遊びである」等のネガティブ印象はより低いことが示された。これらの結果はワーケーションに関する知識を消費者に正しく提供することで、ワーケーションに関する偏った印象評価を是正できる可能性を示唆しているという。
同研究所によると、ワーケーションは有給休暇と同様に、従業員のウェルビーイングや生産性を高める人事施策として広く普及することが期待されているという。しかし、ワーケーションは業務を行うため休暇ではないが、リゾート地などで業務を行うことに対する後ろめたさや抵抗感といったネガティブ感情が従業員のワーケーション取得の障壁となることが予想されるという。
調査では、このネガティブ感情の程度は「ワーケーションに関する具体的な知識を持たない人の方が大きい」と仮定し、「ワーケーションという言葉を見聞きしたことが無い」および「ニュースやテレビ等でワーケーションという言葉を見聞きしたことはあるが、どのようなものかはよく知らない」と回答した人を「知識なし群」、それ以外の「見聞きしたことある」などの人を「知識有り群」と定義して、「自分自身がワーケーション取得申請をする場合」、「自分の部下がワーケーション取得申請を行ってきた場合」など4場面を想定し、各ワーケーション取得場面における心理状態を調べた。
結果、自分自身がワーケーション申請を行う場面(非管理職×非繁忙期と仮定)を中心に、「おびえた」「うろたえた」「恐れた」「恥ずかしい」「イライラした」「ぴりぴりした」「苦悩した」「不平等である」「ねたましい」などのネガティブ感情が、知識有り群と比べて、知識無し群が有意に低いことが明らかになったという。一方で、「やる気がわいた」については、知識有り群が有意に高いことが示された。これらの結果は、ワーケーションに関する知識の有無が取得時の従業員の心理状態に影響を与えることを示唆しているという。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」