東日本旅客鉄道(JR東日本)は12月8日、東京都千代田区のJR東京駅構内に設置したロボバリスタ「Ella」を報道陣向けに公開した。同日より2022年2月28日までテストマーケティングを実施する。営業時間は7時~22時(ラストオーダーは21時30分)。
発表会には、Ellaを開発したシンガポールのCrown Technology Holdings CEOのKeith Tan氏、東日本旅客鉄道 常務執行役員の表輝幸氏、JR東京駅 駅長の百瀬孝氏らが出席した。
Ellaは、東京駅構内の待ち合わせ場所として知られる「銀の鈴広場」に設置している。Ellaは、スタンドアロン型の「Ella X」とカフェ内に設置する組み込み型の「Ella Y」があるが、東京駅に設置されたのはElla Xで、コーヒーを同時に3杯まで抽出できる性能を持つ。Tan氏は、Ellaを設置するメリットについて「(カフェを設置する場合に比べ)場所を節約でき、完全に自動化することで人力も節約できる。自動化により、正確さと敏しょう性も兼ね備える」と説明した。
なお、JR横浜駅構内には小型のElla Yが設置されている。このほか、日本では未導入だが、オフィスなどに好適な省スペース型でもっとも小さい「Ella XS」などがあるという。Tan氏によると、Ella Yの“Y”は、設置場所の横浜(Yokohama)から名付けたという。いずれも注文はモバイルアプリ「Ella」から行う。
価格は、もっとも安い「アメリカーノ」で税込260円(アプリ決済時)から。Ella上でSuicaなどの交通系ICカードでも決済できるが、モバイルアプリからの決済がもっとも安価となる。Tan氏によると「価格設定はシンガポールと日本は似たような価格設定」といい、シンガポールでは3.5~4シンガポールドル(約291円~332円)で提供中だという。また、シンガポールではサブスクリプションプランも提供中で、加入した場合はもう少し安価になるとした。
また、日本のコンビニエンスストアなどで普及している100円台で購入できるコーヒーとの違いを問われたTan氏は「グルメコーヒーのカテゴリで、(コンビニなどのコーヒーとは)異なるもの」と力説した。Tan氏は、過去にカフェを経営していた経験もあるという。
Ella Xは駅ナカ店舗の1つとして出店し、早朝の通勤時などの需要を狙う。表氏によると「東京駅のような大きい主要駅では、周辺に住んでいる人が少ないため、早朝などは特に働く人材を確保するのが困難」という課題があるという。テストマーケティングでは、コロナ禍で非接触・非対面サービスのニーズが高まっていることに加え、朝7時からの早朝営業でどれくらいのニーズがあるのかを検証したいと述べた。また、今後の展開について「カフェの業態は人件費がかかるが、Ellaは収益構造が改善できるメリットがある」(表氏)とし、地方の駅などターミナル駅以外でも展開する可能性も示唆した。
また、駅ナカだけでなく"駅ソト"での今後の展開については「現段階ではまだ決まっていない。今回のテストマーケティングの結果などを踏まえて検討したい」(表氏)と話した。
実際にEllaで抽出したアメリカーノを試飲した。もっともシンプルなコーヒーで、ミルクなどが入らないぶん、コーヒー豆の鮮度やマシンの性能などが出やすいメニューだ。
コーヒーの味にはうるさいほうだと自負しており、コーヒーマシンメーカーとしては有名なデロンギ製のマシンを採用しているEllaでさえ、マシンメイドというだけで失礼ながらあまり期待をしていなかった。
しかし、実際に飲んでみると、香りもよい上に味もしっかり出ている。Keith氏が「コンビニのコーヒーと異なる」と力説するのも頷ける味わいだ。
また、Ellaのマシンは透明になっており、ロボットがコーヒーを淹れている様子も楽しめる。高速道路のサービスエリアなどに設置されている自販機のコーヒーマシンに近いものだ。非常に見ていて楽しく、ビジュアルとしても近未来を感じさせるものだと感じた。
ただ、1つ気になったのは、持ち帰り用のフタがなかったことだ。JR東日本広報部によると、テストマーケティング中にフタを提供する予定はないという。その場で飲むなら問題はないが、テイクアウトの需要もあるだろう。今後の本格導入時にはそうした配慮も期待したい。
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