一方、新規参入の楽天モバイルにも最近大きな動きが相次いでいる。中でも同社の業績を見据える上で非常に大きな動きとなったのは、10月より39都道府県の一部地域でKDDIとのローミングを終了したことだ。
楽天グループの代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏は、前回の決算でローミング費用が楽天モバイルの経営の重しになっていることを訴えており、4Gの人口カバー率96%の達成を5年前倒ししたのもローミング費用の節約が目的と見られている。それだけに人口カバー率が9割を超え、ローミングの終了に目途を付たことが経営上メリットになってくることは確かで、2022年第3四半期以降は業績の大幅改善が見込めるとしている。
ただローミングの終了は、KDDIのネットワークでカバーできていたエリアの“穴”が発生するなど、顧客には大きなデメリットをもたらすことにもつながる。もちろん楽天モバイルも、そうしたエリアの対処は積極的に進めているというが、今後急速にローミングエリアが縮小することを考えると、“穴”が多数発生することが予想されるだけに、顧客の満足度を落とさないよう対処をいち早く進められるかは非常に大きな課題となってくるだろう。
そしてもう1つ、今後のエリア整備を見据えると懸念されるのは半導体不足の影響だ。楽天モバイルは人口カバー率96%の前倒しを発表した際、2021年夏頃の達成を予定していたが、半導体不足の影響を受け2021年末に後ろ倒しし、2022年春へとさらに後ろ倒ししている。
しかも、半導体不足は長期化の様相を呈している。実際、現在のところ半導体不足の影響を大きく受けていないとしている他社からも、「伝送路回りの設備や、国内メーカーを活用しているところなど、細かな部品に一部影響が出ているのは間違いない」(KDDI高橋氏)、「すぐ入るような部品が入らなくなっていたり、チップ周り(の調達)に時間かかっていたりする」(ソフトバンク宮川氏)といった声が出てきているのが現状だ。
それに加えて、楽天モバイルは完全仮想化ネットワークを打ち出し独自のネットワーク構築を進めており、機器調達も大手通信機器ベンダーに依存しない体制を取っている。調達力の大きい大手ベンダーを頼れないことも、半導体不足が長く続けばデメリットに働く可能性が高い。
総務省が11月9日に実施した「競争ルールの検証に関するWG」の24回会合で提出された資料を見ると、2021年3月末から6月末にかけて大手3社の廉価プラン以外の契約者は320万減少し、自然増の10万を含む330万契約が他のプランを契約しているようだが、うち270万は大手3社の廉価プランが獲得。楽天モバイルやMVNOが獲得したのは60万にとどまり、低価格サービスが充実してもなお、大手3社に顧客がとどまっている様子がうかがえる。
楽天モバイルは今回、契約数が2021年9月時点で411万であることを公表、さらに三木谷氏は携帯大手から番号ポータビリティで顧客を順調に獲得しており、Rakuten UN-LIMIT VIと同様、0円から利用できるpovo 2.0についても「影響はなかった」と答えるなど強気の姿勢を見せていたが、こうした数字からは依然、楽天モバイルが大手3社に肩を並べるまで状況に至っていない様子がうかがえる。
そうした状況下にありながら、楽天モバイルはローミング終了後のエリアの穴や、半導体不足など新たな課題を抱えただけに、人口カバー率96%を超えた後も、同社の厳しい状況は続くこととなりそうだ。
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