携帯大手4社の決算が出揃った。各社とも足元の業績に大きな変化はないものの、2021年度を見据えると、菅政権の圧力によって生まれた「ahamo」「povo」などの新料金プランによる料金引き下げの影響が本格化し、業績の大幅な悪化も懸念される。各社の決算説明会の内容から、来期を見据えた収益改善策を追ってみよう。
まずは各社の決算を振り返っておこう。KDDIの2021年3月期第3四半期決算は、売上高が前年同期比0.5%増の3兆9238億円、営業利益が前年同期比3.2%増の8710億円と増収増益に回復。ソフトバンクの2021年3月期第3四半期決算は、売上高が前年同期比5.2%増の3兆8070億円、営業利益が前年同期比5.8%増の8415億円と、こちらは増収増益を維持している。
また楽天モバイルを有する楽天の2020年12月期決算は、売上高が前年同期比15.2%増の1兆4555億円、営業損益は938億円と、やはり携帯電話事業への先行投資による赤字決算となった。なお、NTTドコモはNTTの完全子会社となり上場廃止となったが、2020年度第3四半期決算は単独で公開されており、営業収益が前年同期比0.1%減の3兆5131億円、営業利益が前年同期比4.3%増の8218億円と、引き続きの減収増益となっている。
今四半期は、前四半期と比べても各社の決算に大きな変化はないようだが、今後はそうもいかないことが確約されている。なぜなら菅政権による強い料金引き下げ圧力を受けた結果、各社が2月から4月にかけ、従来より料金を大幅に引き下げた新料金プランを相次いで投入することとなったからだ。
もちろん新料金プランで他社から顧客を奪うことができれば、通信事業でも成長につなげられる可能性はあるだろう。実際ドコモは、大きな注目を集めた新料金プラン「ahamo」の効果で、2020年12月には番号ポータビリティ(MNP)で約12年ぶりの転入超過になったとのこと。それに加えてahamoの事前エントリー数も2月6日に100万を突破しており、新料金プランが他社からの顧客獲得に大きく貢献しているようだ。
だがそれでも、やはり自社の大容量プラン契約者が、より大容量でお得になった中容量プランに多数乗り換えてしまうケースが増える可能性も高く、それは大幅な業績悪化に直結することとなる。とりわけ来期、つまり2021年度は新料金プランの影響が如実に現れることから、いかにその減収をカバーして業績をいち早く回復させられるかが重要になってくる。
その上でも注目されるのは、やはり非通信分野の事業拡大だろう。携帯3社は以前より、頭打ち傾向にあった通信事業に続く事業の柱として非通信分野の事業拡大を推し進めてきたが、菅政権による強い値下げ圧力で通信事業での成長が見込めなくなった現状では、それが一層重要な存在となってきている。
そこで問われるのが通信以外の事業の伸びであり、その非通信分野で先行しているのがソフトバンクだ。実際、同社は2019年に連結子会社化したZホールディングスによるヤフー事業が、コロナ禍によるEコマース事業の大幅な伸びで売上、利益ともに前年同期比15%増の大幅な伸びを記録している。
そしてもう1つ、伸びを支えているのが法人事業だ。同社の法人事業は、やはりコロナ禍によるテレワークなどデジタル化の需要を獲得し、ソリューション関連の事業が急成長。営業利益が前年同期比21%増と、こちらも大幅な伸びを示している。
KDDIも同様に、「ライフデザイン領域」と「ビジネスセグメント」といった非通信分野が業績の伸びをけん引しているようだ。ビジネスセグメントはIoTの累計回線数が2020年12月に1600万と、期初予想の1500万を前倒しで達成するなど好調であるほか、ライフデザイン領域も同社が強みを持つ金融事業や、「au PAY」など決済事業がけん引して好業績につながっているという。
ドコモも非通信分野の「スマートライフ領域」は引き続き好調を維持しており、とりわけ「dカード」などの決済を主体にスマートライフ領域の強化を図っているようだ。同社の代表取締役社長である井伊基之氏は「dカードやd払いはまだまだ強化する余地が残っている」と話し、今後決済分野を一層強化していく考えを示している。
ただドコモは、他社が好調な伸びを示している法人事業を思うように強化できないのが痛いところだ。その理由は、NTTの完全子会社となったことで推し進められているNTTコミュニケーションズの子会社化が、公正競争上他社からの反発を受けているため。NTT代表取締役社長の澤田純氏は、子会社化に関して「公正競争条件は今も担保できていると、われわれは考えている」と話しているが、現在総務省で進められている議論を見据えなければ動きがとりづらい点は不利だといえる。
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