富士通Japanの中西氏が発表したのは、昨今広がっている在宅勤務環境でも、従業員の「気持ち」や「気付き」をネットワーク通じて互いに伝えられるようにし、メンタルヘルスの維持・向上を目指す「Connector」というサービス。
同社が属する情報通信業界は、メンタルの不調で休職・退職する人の割合が最も多いと言われ、他業種平均の2.3倍、毎年1万5000人がそうした状況に陥っているとされる。中西氏も、同僚が心の問題で休職・退職していくのを間近で見てきたことから、「この状況を変えたい」という思いでプロジェクト化、精神科の医学博士も加えたチームで取り組み始めた。
ヒアリングを重ねていくなかで、一度メンタル不調を経験した人の多くが、「他者の不調に気付いて、声かけ、相談の場を設けるようになる」といった考え方の変化を起こすという共通点を発見。中西氏は、相談できる場や機会の少なさを自ら感じていることがそうした変化に表れていると見る。しかし、最近はコロナ禍で在宅勤務などテレワーク化が進んだ結果、場を設けること自体が難しくなったという別の問題も大きくなってきた。
そこで考えたのが、「気付きときっかけをつなぐサービス」であるConnectorだ。Connectorでは、SlackやTeamsなど日常的に仕事で使用しているツール上で、自分の気持ちを簡単に顔マークで登録できるようにし、他のメンバーも全員の顔マークが見られるようになる。そのうえで、様子の変化に気付いたときに他の人についても顔マークを登録できるのがConnectorの特徴だ。
さらに、他の人の不調になんとなく気付いたとき、その人に声かけするハードルを下げるため、従業員同士でギフトを贈り合えるようにする仕組みも盛り込んだ。より声かけしやすい設計にすることで、コミュニケーションを生み出してストレスや悩みを少しでも解消できるような環境づくりを目指している。
中西氏は、Connectorと同様の仕組みを実際に同社内でトライアルし、効果検証を行った。1パターン目のトライアルでは、自分の気持ちを顔マークで登録するだけ。2パターン目では、気持ちの登録と他者へのギフト・メッセージを送れるようにした。その結果、1パターン目では声かけやフォローをした人が36.3%だったのに対し、ギフトというモチベーションアップの仕組みを取り入れた2パターン目では51.5%へとアップしたという。
また、類似のサービスとも比較したところ、他社の「同僚に感謝・賞賛を送れる」サービスでは、同一チーム内の特定の人に送られることが多く、社内全体で相互に影響することは少なかったという。対してConnectorの仕組みでは、チームの枠を越えて、多数のさまざまな人に声かけ・フォローが発生することがわかった。
競合と比較した場合、「行動を生み出すこと」がConnectorの最大の強みだとして、サブスクリプション型のサービスで企業に提供していくことを検討している。1ユーザーあたり月額700円で、すでに約950社、217万ユーザーが利用している富士通の「e診断@心の健康」を販売チャネルに、5年後に年間売上23.6億円を目指す。富士通グループの従業員13万人において改善実績を作り上げ、それをもとに2022年7月には一般リリースしたいとした。
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