大企業の若手・中堅社員が集結し、企業や業界の枠を超えたイノベーション、事業共創のきっかけづくりの場として拡大しているコミュニティ「ONE JAPAN」。そこで生まれた実際の事業共創プロジェクトを紹介するピッチ「ONE JAPAN 事業共創プロジェクト DemoDay」が、10月31日開催のオンラインイベント「ONE JAPAN CONFERENCE 2021」内で行われた。
フードロスの解決を目指すサービスのサブスクリプション(サブスク)展開、理系学生の単なる就業体験に止まらない新たなインターンシッププログラム、へそ周辺で深部体温(直腸温)の変動の連続データを取得し、熱中症予防に生かす取り組みという、スタートアップによるユニークな3つのプロジェクトが発表され、視聴者投票による優秀賞が決定した。ここではそれら3つの発表内容について紹介していきたい。
ピッチイベント「ONE JAPAN 事業共創プロジェクト DemoDay」は、スタートアップ各社がコメンテーターとの質疑応答も含め計9分で事業共創の内容を発表し、ライブ視聴しているユーザーからの投票によって「オーディエンス賞」を決定するもの。最終的にこの賞には、フードロスの解決を目指すフードシェアリングサービス「ロスゼロ」を運営するロスゼロが選ばれた。
日本国内でも大きな課題になってきている、余剰もしくは規格外の食品の廃棄によるフードロス問題。ロスゼロでは、そうしたロスになりそうな食品を「ロスゼロ」というサービスを通じて一般の消費者に直接届けることで解決を目指している。
すでに百貨店、旅行会社、人材会社、保険会社など多くの企業や自治体との連携が進んでいる同社サービスだが、そのうち2つの事業共創がONE JAPANを通じて生まれたという。
1つが広告会社マッキャンエリクソンとの共創による、サブスク型サービスの企画・実施。かねてからロスゼロとしても取り組みを検討していたサブスクだが、同社代表取締役の文氏によれば、いくつかの課題があったため二の足を踏んでいたという。
たとえば、廃棄になりそうな余剰・規格外食品は常に発生するわけではなく、在庫量にばらつきができてしまい、定期的な提供が難しい場合がある、というのが1つ。また、必ずしも利用者の嗜好に合った商品が手元に届くとは限らず、さらには「廃棄されるもの」というところから品質面でのネガティブなイメージもある。
しかしながら、「それらの課題を反対に生かし、ポジティブな発想に転換できないか」という考え方で、「ロスゼロ不定期便」をマッキャンエリクソンと共同で企画することになった。
サービス名には、在庫量のばらつきから「不定期になるのが食品ロスの特徴であることをあえて知ってもらおう」という狙いがあり、「いつ届くかわからないワクワク感」を利用者にもってもらうことも期待した。
そのうえでメルマガやブログを通じて情報提供し、利用者にフードロスに対する理解を深めてもらいつつ、エシカル消費や応援購入に関心のある層から利用してもらうという意味で、実証実験からスタート。そこで一定の成果が上がったことで、11月5日から一般向けに正式サービスを開始することになった。
マッキャンエリクソンとしては、広告業界でもフードロスを含むSDGsへの関心は強いことから、ロスゼロとの共創を通じて「その知見を貯めて、業界に貢献」していきたいとの考えがあったという。
ロスゼロのもう1つの事業共創は、鉄道や不動産などの事業を展開する東急とのコラボレーション。東急が10月に品川区大井町にオープンした街のコミュニティづくりのためのイベントスペース併設型カフェ「PARK COFFEE」において、ロスゼロの商品を対面販売するとともに、ロスゼロ不定期便のサービス申込みの受付も開始した。
大阪に拠点をもつロスゼロは、関東圏への足がかりを作ってフードロスについての理解を全国に広げたいという思いがある。一方の東急は、大井町においてSDGsに関するメッセージを出し、地域の人々の共感を得ながら、ハードも含めた街づくりを推進している。この両者の思いが一致し、共創に至ったという。
オーディエンス賞を受賞したロスゼロの文氏は、フードロスの問題について「自分ごととして捉えている方が多いのではないか」とし、「あらゆるところで(解決に向けた)ソリューションが出てきており、(ビジネス的にも)大きなチャンス。“もったいない”ものに付加価値をつけ、みんなを笑顔にして、社会を一緒に変えていけたら」とコメントした。
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