スマートロック「Akerun」を提供するPhotosynth(フォトシンス)は、東京証券取引所マザーズ市場へ上場した。1410円の初値がついた。
フォトシンスは2014年9月に設立。現在従業員数は177名で、東京本社を含む5拠点で運営している。フォトシンス 代表取締役社長の河瀬航大氏は「従来は、オフィス、自宅、車と扉を通過するごとにたくさんの鍵を持ち歩く必要があった。しかしシェアリングエコノミーが加速する中、たくさんの鍵を持ち歩くのには限界がきている。扉と鍵がN対Nだった今までに対し、これからは1つの鍵ですべての扉を開けるN対1になる、そんなキーレス社会を実現させていきたい」と、今後作り上げたいキーレス社会の姿について話した。
フォトシンスでは、既存のドアに後付けでき、工事不要で導入ができるスマートロックの「AKerun Pro」、フラッパーゲートやエレベーターなど、電気的に制御している扉をスマートフォンやICカードを使って開け閉めができる「Akerunコントローラー」といったハードウェアと入退室管理や自動勤怠管理などができる「Akerun入退室管理システム」などのソフトウェアを展開。「特徴的なのはサブスクリプションとして提供していること」(河瀬氏)とビジネスモデルについて説明した。
現在、ARR(Annual Recurring Revenu:年間経常収益)は13億7000万円で、サブスクリプション比率は90%、粗利率は82%、3700社以上の契約社数を誇りながら解約率は1.5%に抑える。「主に中小企業のオフィスで利用していただいているが、大企業や研究室、多拠点化などでの利用も増えてきた。すべてのシステムをクラウドで管理しているため、複雑な電気工事がいらず、利便性、堅牢性の高いシステムを提供できる。リアルタイムの入退室ログの取得などもできるため、勤怠管理や人事システムなどへのデータ利活用も可能。つねに最新のセキュリティ機能を提供できる」(河瀬氏)と、強みを話す。
目指すのは、ハードとソフトを組み合わせて決済インフラと市場を創造したキャッシュレス社会だ。「キャッシュレスになることで、それを読み取るためのリーダーが広がり、決済手数料が必要になり、大きな産業が生まれた。鍵がなくなるとこれと同じようなことが生まれてくると思う」(河瀬氏)と、キーレス社会の実現とそれに伴う市場創造をフォトシンスのチャレンジと位置づける。
「今まではオフィス向け事業に集中してきたが、コンシューマ市場への本格参入として鍵と錠前の総合メーカーである美和ロックとのジョイントベンチャー『MIWA Akerun Technologies』を設立。住宅向けスマートロックサービスの企画提供を開始した」(河瀬氏)と新たなビジネスモデルにも取り組む。
今後は、地方向けの営業担当者の増強や、開発体制の強化に投資していく方針。「スマートロックはまだ黎明期。10名以上の従業員がいる会社であれば鍵の管理は必ず必要になる。この市場は非常に大きいと思うので、地方の営業担当者を増やすなど、しっかりと対応していきたい。また、勤怠管理システムやカメラ連携など、スマートロックの周辺ビジネスに投資をして、この部分でもマネタイズしていきたい。今の成長率をより加速させていく」(河瀬氏)とした。
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