代替たんぱく、普及の鍵はブランディング--グリーンカルチャーが語る植物肉の魅力と課題

 2021年10月25日から5日間連続で開催された本誌主催のウェブセミナー「CNET Japan FoodTech Festival 2021」。テクノロジーの側面から食の価値や安全性の向上、食に関わる社会課題などの解決を目指す各社の取り組みを紹介するこのイベントは、今回で3回目。2020年に続き2回目のオンライン開催となった。

 2日目の前半に登壇したのは、大豆を主原料とした植物肉を開発・製造するグリーンカルチャー代表取締役の金田郷史氏。日本国内ではまだ一般的とまでは言えない存在ながらも、すでにテクノロジーの力で実際の肉に近い食味が得られるものに仕上がっているというこの植物肉について、従来の畜肉と比較したときの利点や可能性を語った。

グリーンカルチャー 代表取締役 金田郷史氏(左上)
グリーンカルチャー 代表取締役 金田郷史氏(左上)

代替たんぱく、10年後には2兆円に迫る市場規模に

 グリーンカルチャーが提供しているのは、大豆を主原料にした挽肉状態の「Green Meat」と、それをもとにした食品の数々。同社が運営するプラントベース食品専門通販サイト「Green’s Vegetarian」では、牛丼やシュウマイ、ピザなど、通常の肉を用いたものと見た目や味に遜色のない商品をラインアップしており、誰でも気軽に購入できる。

植物肉を使用したさまざまな商品が登場してきている
植物肉を使用したさまざまな商品が登場してきている

 学生の頃、動物の命の価値を考えることになったのをきっかけに、自らもヴィーガンとして肉を口にしなくなったという金田氏。ただ、自身が開発する植物肉は、従来の畜肉の代わりにすることを目的としたものではない、と言い切る。あくまでも「テクノロジーを用いて、畜肉以上の価値あるものを植物から作り、それを食の選択肢の1つとして提案したい」というのが同氏の考えだ。

 動物性たんぱくの代わりに、他の方法でたんぱく質を摂取する方法として注目されている代替たんぱくの市場は、国内ではまだ目立ってはいないが、世界的には大きな流れになりつつある。同氏によれば、2020年の代替たんぱくの消費量は1300万トンあり、これが2035年には約7.5倍の9700万トンに、流通額も2020年の2570億円から、10年後の2030年には約7.3倍の1兆8720億円規模になると見られているという。

代替たんぱくの消費量は2035年には9700万トンに達すると予測
代替たんぱくの消費量は2035年には9700万トンに達すると予測
流通額も2030年には2兆円近い規模に
流通額も2030年には2兆円近い規模に
代替たんぱくは、特に米国での消費量が多い
代替たんぱくは、特に米国での消費量が多い

 代替たんぱくの需要の増加は、技術革新による食味の向上と、代替たんぱくに対する消費者認知の向上も一因と考えられている。特に畜肉の消費量が多い欧米諸国においては、同じように代替たんぱくの消費量も多いという事実があり、背景には、畜肉の消費量が世界的に増加傾向にあって、そのために社会的課題、健康面での課題が表面化しつつあることも関係している。

 社会的課題の例として金田氏は、世界の生産可能面積の3分の1を畜産に使用しているため環境負荷が高く、年間600億頭の動物が処理されているという倫理的な問題を挙げる。また、健康面での課題については、動物性たんぱくの摂取がガンや肥満、心臓病といった健康被害の原因となっているとも指摘されており、さらには畜産の現場が感染症の発生源になりやすい問題もある、と説明する。

 畜肉、代替たんぱくともに消費量が世界で最も多いとされる米国の調査では、そうした健康や環境への配慮、あるいは食の安全性の面から畜肉の消費を減らしたいと考える人が多くなっているようだ。

畜肉には社会的な課題と健康面での課題があるとする
畜肉には社会的な課題と健康面での課題があるとする
米国の人にとって、畜肉の消費を減らし、代替たんぱくを増やすのは、健康や環境、安全性における理由が大きいようだ
米国の人にとって、畜肉の消費を減らし、代替たんぱくを増やすのは、健康や環境、安全性における理由が大きいようだ

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