現在、動物性たんぱくの代替品となっている主な素材は3種類。1つはグリーンカルチャーが扱っているような植物肉で、他には昆虫を原料にしたものや、畜産によるものではない培養肉と呼ばれるものがある。
このうちグリーンカルチャーが植物肉にこだわるのは、他と比べて生産コストが安価であることと、食感や味、香りなど多くの面で実際の肉に近いものを作りやすい、という利点があるからだという。昆虫や培養肉は、食習慣や安全性に対する不安感で受け入れにくいところもあるが、植物肉は、素材となる植物が「日常的に食べているものなので抵抗がない」という心理的な部分でも優位性が高いと見る。
しかも、カロリーや脂質は牛肉に比べて低く、それでいてたんぱく質は同等程度摂取できることから「畜肉よりも健康価値は高い」。生産から消費までの炭素排出量も畜肉の20分の1で済むと見られ、環境面でのメリットも大きいという。
ただ同氏は、おいしさについてはまだ畜肉のレベルには至っていないのが実情であると認める。これは、「肉のおいしさのもととなっているものが、植物にはそもそも含まれていない」ためだが、さらなる食味の向上には、肉を味、香り、脂などさまざまな要素に分解したうえで、「肉の美味しさが何からできているのか、畜肉をリバースエンジニアリングしていくことが鍵になる」と語る。
それでも、グリーンカルチャーが提供している挽肉状態の植物肉は、「料理用としての汎用性高い」ことや「欧米の類似製品に比べて日本の料理に合いやすい」という特徴があり、シューマイ、小籠包のような挽肉料理なら、畜肉から切り替えてもほとんど違和感なく作れるという点で高い評価を得ているとのこと。
技術革新によって食味も徐々に畜肉に近づきつつあり、植物肉がもつ健康や環境への配慮といった面を合わせれば、プラスの価値は大きいものになる、と金田氏。生産量が増えていくことで、その分低コストで製造できるようになり、いずれは畜肉より安価に提供できる可能性もあると付け加える。
金田氏の見込みでは、多くの消費者が植物肉を当たり前のものとして受け入れるようになるのは、以前は一般的ではなかった豆乳が20年かけて10倍の消費量になったことを例に挙げ、あと10~20年ほどかかるだろうという。
牛・豚・鶏といった「陸の肉」、魚介類の「海の肉」に並ぶものとして、植物肉を「新たな1カテゴリーとして普及させたい」ともくろむ同氏。しかしながら、「味をいくら近づけようとしても、植物肉は畜肉にはなりえない、というのが永遠の課題」であり、「代替性の高さをアピールするのではなく、ブランディングで違う価値を付けるしかない」と強調する。畜肉でネックとなる健康・環境面において、植物肉の優位性をいかにメリットとして見えやすい形で伝えられるかが、今後の普及速度にも影響しそうだ。
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