パナソニックは、同社独自の「ナノイー」を実現する帯電微粒子水技術が、新型コロナウイルスにおいて「懸念される変異株」とされるアルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株の4種の変異株に対する抑制効果を実証したと発表した。
帯電微粒子水を2時間暴露することで、すべての変異株で99%以上の抑制効果を確認できたという。パナソニック くらし事業本部くらしアプライアンス社くらしプロダクトイノベーション本部コアテクノロジー開発センター機能デバイス開発部部長の須田洋氏は、「最も感染力が強いといわれるデルタ株を含めたすべての変異株で、99%以上の抑制効果を確認できた。今後も新たな病原微生物をはじめ、さまざまな空気リスクが発生する可能性がある。パナソニックは、継続的に帯電微粒子水技術の可能性を追求するとともに、さまざまな効果検証を進め、社会に貢献していく」と述べた。
パナソニックでは、2020年7月に、帯電微粒子水技術に関して、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抑制効果を実証していたが、今回は、世界保健機関(WHO)が指定したアルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株の4種類の「懸念される変異株」を対象に検証を行った。
実証試験は、一般財団法人 日本繊維製品品質技術センターと共同で実施したもので、帯電微粒子水の暴露の有無によるウイルス感染価の比較実験を45Lの試験空間で実施した。
試験空間では、底面から10cmの位置に、帯電微粒子水発生装置を設置。ウイルス液を滴下したガーゼをシャーレに設置して、2時間に渡り、帯電微粒子水を暴露。ウイルス感染価を測定して、抑制率を算出した。
従来株では99.7%の抑止率であったが、アルファ株でも99.7%、ベータ株は99.8%、ガンマ株は99.8%、デルタ株も99.8%の抑止率を達成したという。
パナソニックでは、「今回の検証は密閉した試験空間での結果であり、実使用空間における効果を検証したものではない。また、パナソニックは、医療機器を販売している会社ではないため、製品において、特定のウイルスに対する効果を訴求することはない」としながらも、「検証の難しさはあるが、今後は、実空間での効果検証にも取り組みたい」と述べた。
帯電微粒子水(ナノイー)は、空気中の水を結露させ、そこに高電圧を加えることで生成されるナノサイズ(約5~20nm)の微粒子イオンで、反応性が高いOHラジカルにより、脱臭のほか、菌やアレル物質の抑制などに効果を発揮する。
タバコの煙やウイルス、スチームよりも小さいため、繊維の奥まで入り込むことでアレル物質を取り込み、活動を抑制できる機能を持つほか、日本の主要な花粉の抑制、PM2.5に含まれる有害物質の分解や生活5大臭や加齢臭の脱臭のほか、弱酸性であることから、肌や髪にも優しいという特徴を持つ。
また、帯電微粒子水は、ウイルスに届いて、ウイルス表面に付着すると、酸化力が強く、反応性が高いOHラジカルが、ウイルス表面のタンパク質を変性させ、ウイルスを抑制。OHラジカルは、水素と反応して水になるという仕組みを持っている。
ナノイーは、パナソニックの空気清浄機やエアコン、洗濯機、冷蔵庫、ヘアドライヤーなどに採用しているほか、自動車メーカーやエレベータメーカー、鉄道会社などにも提供している。
2009年5月に鳥インフルエンザの抑制効果を実証して以降、新型インフルエンザの抑制、カビの抑制、PM2.5含有成分の分解などの効果を実証してきた。
これらの検証を進めながら、ウイルスクリアランス試験を実施した結果、生物学的特性で4つに分類した各項目(遺伝子がDNAまたはRNA、エンベロープあり、なしの組み合わせ)において、それぞれに抑制効果を確認。これをもとに、2012年1月には、「帯電微粒子水技術には、既知のウイルスおよび未知のウイルスに対しても、生物学的作用機序の観点から、抑制効果が期待できる」と発表していた。
新型コロナウイルスは、RNA/エンベロープありに分類されるため、同社では、新型コロナウイルスに関しても、抑制効果があると予測していたが、2020年7月に、大阪府立大学と共同で、新型コロナウイルスに対する帯電微粒子水の抑制効果を実証。今回は変異株についても、「帯電微粒子水技術による効果は期待できるが、感染拡大の状況を鑑みて、改めて検証を行った」(須田氏)としており、その結果、抑制効果が実証されたという。
大阪府立大学 生命環境科学研究科教授の向本雅郁氏は、「帯電微粒子水に含まれるOHラジカルの抗ウイルス作用については、完全には解明されていない。だが、抗体のような特異的な反応ではない。インフルエンザウイルスやカリシウイルスを用いた実験結果からは、帯電微粒子水のウイルス抑制効果は、ウイルスを構成するタンパク質、糖、脂質のような成分に依存した作用であると考えられる。今回の検証結果からも、帯電微粒子水の新型コロナウイルス株間における抑制率には違いがみられなかったことから、一部のアミノ酸置換によるウイルス変異では、不活化効果には影響を及ぼさないと考えられる」と発言。「そのため、帯電微粒子水技術は、今後も出現が予測される変異株に対しても、今回と同じ実験条件下で試験を行えば、同じ実験結果が得られるものと期待できる」とした。
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