パナソニックは10月15日、トヨタ自動車と共同で、指部への比較的軽度な傷害の未然防止に向けた評価用ツール「裂傷評価指ダミー」(指ダミー)を製品化したと発表した。人と機械が共存、協働するモノづくり現場において、接触時の安全性を評価する技術として活用していく。
指ダミーは、ロボットなどの機械装置や家具など、指を挟み込むような狭い箇所に、人体に代わって挟み込み、裂傷の有無を確認できるというもの。指の挟み込みや接触といった、作業者の身の回りの危険をダミーで評価することで、安心、安全なモノづくり現場につなげる。
トヨタ自動車 モノづくり開発センター開発試作部生産プラットフォーム革新室ロボットシステム開発グループグループ長の吹田和嗣氏によると「自動車部品は固いものや尖ったものが多いという特徴があり、ロボット、ワークや治具、ツールに作業者の指が挟まれてしまうなどの事故が想定される。こうしたリスクに対する安全確保と確認が必要になるが、今まで安全を評価する手段がなかった」と現状を説明する。
パナソニックでは、安全性評価技術について取り組むプロダクト解析センターをコーポレート戦略・技術部門内に設置。パナソニック プロダクト解析センター所長の難波嘉彦氏は「プロダクト解析センターは、パナソニックの事業を支える『商品』『生産』『解析評価』の3つの技術の内、解析評価技術を担っている。ユーザービリティ、材料分析など8つのコア技術を持つが、そのうちの1つが『電気・人体安全』技術になる」と説明した。
その流れを汲み、人とロボットが共存する環境における安心、安全の確保についても技術開発を推進しており、すでに、人とロボットの接触における危害の程度を区別できる「Pain Sensing ダミー(上肢部)」を開発している。
Pain Sensing ダミーは、人体の痛みを感じる構造を皮膚下のセンサーと骨表面のセンサーで再現できるというもの。皮膚、皮下組織、骨から成る人間の腕の構造を素材を組み合わせることで再現し、ロボットと接触した際に生じる痛みを区別する。
指ダミーは、人とロボットの挟み込み時の安全性を評価する技術。無傷、軽微、中程度、重大、致命的と危害の程度を5段階に分けた時、軽微と中程度の危害を区別するため、裂傷を指標としているという。
人体の骨にあたる芯棒部に、皮膚にあたる軟材料(指ダミー部)を被せた構成。皮膚に見立てた軟材料は、実際の人体と同程度と推定される裂傷強度を持つ独自開発の材料を使用している。指ダミー部を機械などに挟み込ませ、その際に軟材料が受けるダメージの程度から傷害を可視化し、指部の軽度な傷害の予測とその評価ができるというもの。軟材料を交換することで、繰り返しの使用が可能だ。
パナソニックが指ダミーの技術開発をし、トヨタ自動車がモノづくり現場におけるダミーの実証評価を担当。製造、販売は、シリコンの加工や加工品の販売などを手掛けるタナックが請け負った。同日から、裂傷評価指ダミー セット(指ダミー部品、芯棒、取手 各1個)を税込価格6万6000円、裂傷評価指ダミー 交換部品(指ダミー部品 3個)を同4万9500円で販売している。
パナソニック プロダクト解析センター安全・EMCソリューション部部長の渡邊竜司氏は「今回はニーズが高く、早急に必要だった指ダミーを開発したが、ニーズがあればそれ以外の部位についても開発を進めていく」とした。
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