「パーパスが通じ合う採用」とは何か?--グーグルの事例からみる社内組織に与える影響 - (page 2)

草深生馬(RECCOO COO兼CHRO)2021年10月16日 09時00分
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なぜ、「パーパス採用」は組織全体に効果絶大なのか?

 個人と企業がパーパスを通じ合わせることは、採用プロセスの端々に良い影響を及ぼします。

 たとえば、ブランディング戦略において、ジェネレーションZが強く意識する「企業のパーパス」を採用メッセージとして表現することは、より多くの若い人材を惹きつけるきっかけとなるでしょう。そうして形成した母集団(その企業を志願する学生たち)の一人ひとりと、「パーパスの通じ合い」を目的にした会話を重ねることで、組織に対する本質的な魅力を感じてもらえるようになります。それこそが採用活動における面談や面接の本当の意味です。結果的に、現在、多くの採用担当者の皆さんが頭を悩ませている「内定承諾率」や「採用後に判明するミスマッチング」を改善できます。

 「パーパスが通じ合う就活を、採用現場において実装していくにはどうすればいいのか?」

 これは私がたくさんの企業の新卒採用担当者とお話する際によく寄せられる質問です。ひと言で答えれば「一貫性のあるCandidate Experience(候補者体験)を提供してください」となります。つまり、広報施策として候補者に向けて打ち出すメッセージ、採用プロセスに関わる社員たちの振る舞い、メールでの連絡など学生とのあらゆる接点において、「組織のパーパス」が明確に感じ取れるようにする、ということです。

 Candidate Experience(候補者体験)については次回詳しく書かせていただきますので、今回は「パーパス」を軸に据えた採用が、組織全体にどれほどプラスの影響を与えるかについて深掘りしていきたいと思います。

「社員の積極性」を引き出す施策がことごとく失敗する理由

 実際に、パーパス採用を続けると、社内の組織にも大きな変化が現れます。私が考える一番のメリットは、「組織内の個人が極めて高い積極性を発揮すること」に尽きます。自分が所属している会社とそこで日々営まれる業務が、自分個人のパーパスと通じ合っていると実感していると、職務へのコミットメントは自然と高くなります。やがて、個人のコミットメントの高さは組織全体にポジティブなエネルギーとして伝播し、良い成果を生み出し、それがさらにポジティブなムードを高めるという好循環に繋がります。

 これをもっと細かい視点で見ていくと、社内研修の参加率が高まる、関心のある他部署の業務を自発的にサポートする、有志で新規事業立案のコンペが開催されるなど、ボトムアップの動きが加速します。こうした社員の積極性を喚起するために苦労している企業は多くありますが、採用活動において入社前から互いのパーパスを通じ合せ、候補者の組織に対するエンゲージメントを高めておくことで、自発的に引き起こすことが可能なのです。

 グーグルでもこうした社員の積極性はよく見られました。たとえば、一般的に回答率が低くなりがちな研修実施後のアンケートも、グーグルでは回収率が90%を下回ったことはなく、非常に有意義なフィードバックで埋め尽くされていました。社員曰く「自分が関心を持って参加した研修をさらに良いものにしたいと思うから、当然回答する」とのこと。

 自分が関心のある領域はもちろん、その周辺にも食指を伸ばし、新しい刺激を楽しめる空気が組織全体に充満していたのは、やはり「パーパス採用」によるところが大きいと分析しています。

「業務内容」や「ビジョン」での惹きつけは限界がある

 一般的に企業の採用現場では、候補者との理解を深めるために「業務内容」をベースに会話をすることがほとんどです。もちろん、入社後の業務を正しく理解し、納得した上で入社してもらうことの重要性は誰も否定しないでしょう。ただ、入社から数年して業務が変わってしまった際、その候補者はどのように順応したらよいのでしょうか。それまでと同じくらいの熱量で仕事を続けてもらうために、企業としては何かしら追加の投資が必要となるでしょう。

 また「業務内容」の他に「ビジョン」によって候補者との理解を深める方法もあります。つまり会社の掲げるビジョンによって候補者を惹きつけ、共感してもらい入社に繋げるという手法です。これも採用の現場ではかなり一般的ですが、ビジョンもビジネス環境の変化に応じて数年単位で変更を余儀なくされます。

 それに対して、社会における存在意義を言語化した「企業のパーパス」は、そう簡単に変わるものではありません。同様に個人にとっての「人生のパーパス」も変化しづらいものです。だからこそ、パーパスという両者にとって非常に根源的な想いにおいて通じ合うことが、最も安定した強固な絆を生むのです。

 繰り返しになりますが、私は強い組織づくりの鍵は、やはり「採用」が握っていると考えます。面接を通して、個性と向き合い、パーパスを通じ合わせる採用こそが、全ての始まりなのです。その実装に当たっては、採用ブランディングの発想の転換、面接官のトレーニング、社員全員のマインドセットの設計など一筋縄ではいかない難題が山積していますが、世界的な潮流を踏まえても、もはや後回しにする余裕はないと思います。

 次回は、今回ご紹介した「パーパス採用」を実装していく上で欠かせない「Candidate Experience(応募者体験)」の重要性について書いていきたいと思います。選考プロセスを通して「企業の個性」を適切に学生に伝えるための方法を、できる限り実践的にご紹介していく予定です。

草深 生馬(くさぶか・いくま)

株式会社RECCOO COO兼CHRO

1988年長野県生まれ。2011年に国際基督教大学教養学部を卒業し、IBM Japanへ新卒で入社。人事部にて部門担当人事(HRBP)と新卒採用を経験。超巨大企業ならではのシステマチックな制度設計や運用、人財管理、そして新卒採用のいろはを学んだのち、より深く「組織を作る採用」に関わるべく、IBMに比べてまだ小規模だったGoogle Japanへ2014年に転職。採用企画チームへ参画し、国内新卒採用プログラムの責任者、MBA採用プログラムのアジア太平洋地域責任者などを務めるかたわら、Googleの人事制度について社内研究プロジェクトを発起し、クライアントへの人事制度のアドバイザリーやプレゼンテーションを実施。

2020年5月より、株式会社RECCOOのCOO兼CHROに着任。「才能を適所に届ける採用」と「リーダーの育成」を通して日本を強くすることをミッションに掲げる。現在は経営層の1人として自社事業の伸長に取り組みつつ、企業の中期経営計画を達成するための「採用・組織戦略」についてのアドバイザリーやコンサルテーションをクライアントへ提供している。

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