西武鉄道は10月7日と8日、西武球場前駅において、走らない鉄道車両の中でテレワークができる「WORKING TRAIN」を開催した。初日となる7日の模様をお届けする。
昨今の鉄道業界では、リモートワーク需要に応え、新たなサービス提供の動きが加速している。列車内では、これまでにもコンセントやWi-Fiといったサービスが提供されてきたが、東海道・山陽新幹線ではビジネス向け車両の「S Work車両」を10月1日より提供。東北・北陸・上越新幹線でも、車内でWeb会議が可能な車両「新幹線オフィス車両」を、11月22日より提供するという。
一方、今回のWORKING TRAINは、鉄道車両内でリモートワークという点は変わらないが、車両が走行するわけではないという点で特徴的だ。
WORKING TRAINは、西武狭山線の西武球場前駅に留置した車両が会場となる。車内に大型のテーブルを設置し、リモートワークが可能な環境を提供している。
入退場や決済には、スマホアプリ「via-at」を使用。予約はできず、利用料金は退場時にクレジットカードで決済される。料金は10分あたり110円で、最大料金は4時間1100円となっている。
使用する車両は、座席定員制列車「S-TRAIN」などで活躍する40000系。一般的な通勤電車のように窓方向を向いた座席の間に、大型のテーブルを仮設し、作業環境を提供している。また、40000系では電源コンセントやWi-Fiの設備を有しており、WORKING TRAINではこれらも使用可能。さらにプリンターも用意しており、鉄道車内ながら書類の印刷もできる。
車両は10両編成で、今回はこのうち5両を使用。うち3両を「音OKエリア」、2両を「黙々エリア」と設定した。Web会議などで音声を再生する場合にはイヤホンの使用が求められていたが、ニーズにあわせて2つの環境を選ぶことができる仕組みだ。
実際に体験してみると、テーブルが広く使えるため、予想以上に快適だ。新幹線や特急列車の座席背面テーブルは、PCと同程度のサイズが多く、マウスや書類といったPC以外の物品を載せることは難しい。その点、今回の車両のように広々とした環境であれば、利便性は上がるだろう。
また、この40000系では、ドア横のボタンで利用者が乗降用ドアを開閉できる。西武球場前駅は周辺の喧噪が気になる立地ではないが、乗降時以外はテーブル横のドアを閉めることで、落ち着いた環境で仕事が進められる。
今回のWORKING TRAINがターゲットとする利用者は、西武球場前駅が最寄りとなるメットライフドームで開催される、埼玉西武ライオンズの試合観戦者だ。メットライフドームは、池袋駅からの所要時間が40分前後と、決して近い距離ではない。業務を終えてからの移動では、試合開始に間に合わないという観戦者もいるだろう。
そこで西武鉄道は今回、最寄りとなる西武球場前駅で臨時にコワーキングスペースを提供し、リモートワーク終了後にそのまま球場へ移動できる環境を提供。「仕事後に試合観戦したい」というニーズに応えた、新しい形のサービスを生み出した。
WORKING TRAINは、今回は実証実験的な位置付けで、今後の実施や他駅での開催などについては未定だという。走らない列車内でのテレワークというこのサービス、今後のさらなる展開が期待される。
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