2021年6月期の決算で、上場以来初の通期黒字化を達成したメルカリ。米国事業においても同時期に黒字化を果たし、国内外のいずれも事業は好調のようだ。2021年7月末からは、ネットショップを簡単に開設できるようにする「メルカリShops」も新たにローンチしており、メルカリブランドのさらなる拡大が期待される。
そんな中、同社はサステナビリティを意識した取り組みを開始している。循環型社会の実現、ダイバーシティ&インクルージョンの体現、地域活性化など5つのテーマを掲げ、メルカリがそれに対してどのように関わっていくかを明確に示した。
一方、メルカリ代表取締役会長兼CEOである山田進太郎氏個人も、山田進太郎D&I財団を立ち上げてダイバーシティを推進したり、高等専門学校に多額の寄付をしたりするなど、アグレッシブな動きが目立つ。
メルカリという企業として、あるいは山田氏個人として、そこにはどのような狙いがあり、どんな未来を思い描いて活動を広げているのか。山田氏にインタビューした。
——ここ数カ月だけを見ても、上場以来初の通期黒字化、米国事業の黒字化、さらには新規事業として「メルカリShops」をスタートするなど、多くの動きがありました。山田さんご自身、最近の成果をどのように受け止めていますか。
3年前の2018年に上場してから、コロナも含めいろいろ紆余曲折がありながらも、ビジネスとして成長し、収益基盤も整ってきたと感じています。2020年はコロナ禍もあり、「筋肉質な体制にするぞ」ということで注力する部分を絞り込んできたところもありましたが、2020年後半あたりから、周りを見渡したときに「いろいろなオポチュニティがあるな」とも感じるようになりました。
たとえばメルカリShopsは、決済サービスの「メルペイ」で中小の加盟店さんとのお付き合いが増えて、その中でわれわれができることがないかを探していく中で見つけたものです。暗号資産を扱うメルコインも、メルペイで考えていた3つのフェーズ「決済・与信・お金を増やす」の3つ目のところをやっていこう、という話から生まれたものでした。
ですので、今はどちらかというと新しいこともできるように、体制も含めて、一度絞ったものを改めて拡張していこう、いろいろなオポチュニティを探していこう、というフェーズに入っているのかなと思います。
——この1年あまり、コロナ禍や緊急事態宣言で出社を控えていることによる事業活動への影響はありましたか。
今は特にないですね。当初はどういう影響があるのか見えなかったことが、「筋肉質な体制に」ということで絞り込んでいた理由の1つでした。最初は人材採用時に人間関係をつくる部分がオンラインだと難しいところもありました。ですが、今はオンラインチームビルディングもできていますし、安全面に配慮しながらもオフラインでのチームビルディングもできるようにしているので、採用後にうまく戦力になってもらえている実感があります。
そこがうまく回り始めているのも、事業拡大を目指せる要因になっていますし、9月1日に「メルカリ・ニューノーマル・ワークスタイル “YOUR CHOICE”」として発表した通り、テレワークを含め多様な働き方を推進することを対外的に表明できるようになったのも、そのおかげですね。
——国内事業と海外事業が近いタイミングで黒字化したことには何か因果関係はあるのでしょうか。
そこは全然ないです(笑)。メルカリはコロナ禍でステイホームによる需要で大きく伸びたところもありますし、メルペイの方は2020年、2番目のフェーズである「与信」のところにフォーカスして、1年間で収益性がかなり高まった結果です。狙ったわけではなく、ただ結果としてそうなっただけで、これからもずっと黒字であることが保証されているわけではありません。あくまでも将来利益の最大化、どうグロースできるか、というところを今後も目指していきたいと思っています。
——企業としては次のステージにステップアップしているタイミングかと思います。メルカリとしての今後のビジョンや目指しているその先について聞かせてください。
メルカリのミッション、目指しているところは「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」というものです。日本ではMAU(月間アクティブユーザー)が今のところまだ約2000万人ですけども、それだけの人たちが使ってくれているプラットフォームになっている。そんな中で、2020年から「循環型社会で必要不可欠な存在になる」ことを打ち出しはじめました。
「循環型社会」はSDGsの1つのテーマで、それに対してわれわれにできることがたくさんあるのではないか、という思いがありました。循環型社会がいつか実現したときに、われわれのサービスが社会にとって必要不可欠なものになることができれば、今の2000万人を3000万人、4000万人と増やしていけるだろうとも考えました。
そうなった場合、商品の一次流通と二次流通の関係性がものすごく重要な、強固にすべきものになってきます。一次流通あっての二次流通だし、二次流通がある中で一次流通を考えていかなきゃいけない。そこでわれわれができることは大きいのではないか。つまり、世の中になくてはならない必要不可欠な存在になる、というのがわれわれのできることではないかと思いました。
突き詰めていけば、メルペイもメルカリShopsも、あるいはメルコインが扱うNFTのようなブロックチェーンによるデジタル資産も、いろいろなものが滑らかに循環する世の中にマッチするものだと思うんです。ただ、ミッションにあるように「世界的な」となると、それが日本や欧米2〜3カ国では足りないですから、少なくとも5〜6カ国、できれば何十カ国という規模でサービス展開したいですよね。それができたときにミッションを達成したと言えるかなと思います。
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