循環型社会は「メルカリ創業時から頭にあった」--山田進太郎氏が描く未来図 - (page 2)

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2021年09月27日 09時00分

循環型社会の実現は「メルカリ創業時から頭にあった」

——循環型社会というところでは、決算会見の中での「プラネット・ポジティブを目指す」という言葉が印象的でした。この言葉に込めた思いを教えていただけますか。

 まず、地球環境あっての企業活動だよねと。エネルギーや資源の消費など、われわれは地球に対してさまざまな負荷をかけながら生活をしているわけですが、今は二酸化炭素も含めて、排出と吸収・再生を差し引きゼロにするニュートラルに持っていくのが世界的な大きな流れの1つとしてあります。その流れの中で、マーケットプレイスというわれわれのビジネスモデルが果たせる役割も小さくないと思っているんです。

 SDGsの観点で言うと、われわれの事業から生み出されるポジティブな影響なんて、カウントされないようなちっぽけなものかもしれません。でも、循環型社会を目指しているからといって、たとえば「新品のジーンズを買うよりメルカリで中古を買った方がいいよ」なんて声高に言うのは、僕らとしてはちょっと違うと思っています。

 一次流通あっての二次流通ですから。資源を大切に使うという自然で当たり前の流れになる世の中で、われわれは自分たちでやれることをやっていく。その一方で、メーカーさんや一次流通とはむしろ協業することで、必要なものを必要なだけ作るというような、そんな世の中にしていけるんじゃないかなと思っています。

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 なので、「いつまでに100%再生エネルギーにします」みたいな定量的な話ではなくて、そういうものを超えたところで地球をポジティブにしていくんだ、といった意志を込めたかった。社内でいろいろと議論を重ねたうえで、造語ではありますが「プラネット・ポジティブ」という言い方がそこには一番適切ではないかと考えて、生まれたということになります。

——そういった考え方はいつ頃からお持ちだったんでしょうか。

 限られた資源をどう使うか、というテーマについては、メルカリの設立当初からありました。私は会社を作る前に世界一周旅行をしたんですが、多くの新興国を回ったときに、そこに住むみんなが豊かになろうと努力していた。でも、その全員が欧米や日本のような先進国と同じ暮らしをしたら、どう考えても資源が足りないし、ものすごい負荷が地球にかかる。これはなんとかならないのかと。

 その後日本に帰国したときには、スマートフォンが流行し始めていて、いずれ全世界の人が1人1台持つだろうなと思いました。そこで物を売買できるようなサービスを作れば、もしかすると地球資源の問題解決にもある程度貢献できるかもしれない、世の中から必要とされるかもしれない、と思ってメルカリを始めたわけです。

 けれども、「このサービスは地球に優しいから使ってみてよ」と勧めたところで、みんながすんなり受け入れて利用するわけでもありません。なのでわれわれとしては、家にあるもの、使ってないものを簡単に出品できて、それが誰かにとっての価値になるってすごくいいことだよねと。出品する側はお金も稼げるし、買う側も新品にこだわらないのであれば安く手に入る。そういう実利の部分やエモーショナルな部分にフォーカスしてUXを作ってきました。

——最初から構想として頭にあったことが、実績を積み重ねてきたことによって明確に打ち出せる良いタイミングがきたと。

 そうですね。ただ、サステナビリティという世の中の大きな流れ、関心の高まりもあるので、われわれとしてもそこに対して何ができるかをしっかり考えていく必要もあります。自分たちができることが増え、影響力も増してきて、社会的に意味のある存在になっていくなかで、8月にサステナビリティレポート「FY2021.06 SUSTAINABILITY REPORT」も公開しましたが、最近はこうした考え方をわれわれのサービスなどプロダクトの中にも少しずつ埋め込もうとしています。

 たとえば、梱包材をリサイクルする「メルカリエコパック」もその1つですね。こうした活動を通じてユーザーの方に利用していただくことで、循環型社会につながっていく実感を持っていただける、そういう形を広げていきたいなと思っています。特にこういうものは若い世代ほど敏感で、サステナビリティを意識した活動に取り組んでいる企業で言えば、iPhoneの人気が高い米IT大手のアップルもそうですし、米国のシューズメーカーのオールバーズも注目されていますよね。

 そんな風にサステナブルな要素を重視する世代が出てきている感覚があるので、われわれもそれに対して「こういうことをやっている」というアピールをきちんとしていかなければならないと思っています。

——今後のサステナビリティへの取り組みで言うと、梱包材のリサイクルはわかりやすい例ですが、「社内の電力調達の見直し」というのもあります。こちらは具体的にはどういった活動になりますか。

 これはいわゆる再生可能エネルギーへの切り替えが主ですね。今は電力自由化もありますし、化石燃料による電気から、再生可能エネルギーによる電力への切り替えも難しくはありません。とにかく、企業としてできることはやろう、ということで打ち出したものになります。オフィスで使う電力もそうですし、広告関連で使っている電力も大きいですから、今は広告代理店とも削減の方法について話し合っているところです。あとはグループの鹿島アントラーズが使っているバスもそうですね。車両の切り替え時期に来た時にはガソリン車ではなく、EVなどに置き換えることも考えられます。

——そのほかに考えてらっしゃる取り組みでいうと、どのようなものがあるでしょうか。

 われわれだけでできることにはやはり限りがあります。ですので、パートナー会社と一緒にどうやってエネルギー消費や二酸化炭素を削減できるかを検討していくことも必要です。たとえば、物の配送という意味では再配達問題がありますよね。何度も同じ場所を行ったり来たりするのは当然余計なエネルギーが必要なので、置き配などをもっと推進していくことがまず考えられます。また、これはしばらく先の話になると思いますが、ドローン配送のようにロボットで配達する方がエネルギーや二酸化炭素削減の面でメリットがある場合もあります。

 多くのパートナー会社と話し合いながら進めるのはもちろんですが、たとえばわれわれが持っている二次流通に関する何らかのデータを提供することで、一次流通やメーカーさんのお役に立てるようなところもあるかもしれません。

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——ちなみにサステナビリティに関する活動に関連して、社員のみなさんは日々どんなことを意識しながら働いているのでしょうか。

 SDGsというか、ESG(環境、社会、ガバナンス)のような感じで、社内ではかなり横断的なプロジェクトになっています。ガバナンスの部分でも実はいろいろな改革をしていて、たとえば取締役会のメンバーはすでに社外の方のほうが多くなっています。

 環境、社会に関する部分についても、社内に特定の推進役がいるというわけではなく、いろいろな部署の人たちが集まって、この分野はここまでやろう、というように目標を決めて進めています。さまざまなチームでディスカッションが行われていて、どこまでやる・やらないの議論は社内で日常的にされていますね。サステナビリティに関係しない部署もごく一部にはあるかもしれませんが、基本的にはあらゆる部署のチームがESGの中でできることを考えていますし、社内ではかなり浸透してきていると感じます。

——ところで、メルコインではビットコインも扱っていますが、そのマイニングに膨大な電力を消費するということで世間では批判の的にもなっています。サステナビリティとは矛盾するところもあると思いますが、そのあたりはどのように考えていますか。

 われわれは、mercari R4Dという研究開発組織のなかで、数年前からブロックチェーンについて研究を進めてきています。今のビットコインは電力を使ってマイニングしていますが、環境負荷が少ない暗号資産もいろいろと生まれてきている現状もあります。より負荷が少ないものを開発するという技術的な動きに加えて、マイニングの処理自体も、化石燃料をもとにした電力ではなく、太陽光などの自然エネルギー、再生可能エネルギーでまかなう動きも出てきています。完全にそうなるのがいつかはまだわかりませんが、われわれとしても研究を進め、そういったエネルギー問題を解決しながら暗号資産に取り組んでいきたいと考えています。

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