YKK APは9月2日、ワールドハウジングクラブ(WHC)、一般社団法人LIVING TECH協会とともに、在宅ワークやコロナ対応といった生活者の課題と、職人不足という建設業界の課題を解決する住まい「真鶴の家」プロジェクトの実棟モデルを公開した。職住一体を実現する間取りやスマートホーム化などを実現する。
真鶴の家は、神奈川県足柄下郡真鶴町にモデルルームとしてオープン。木造軸組み工法とパネル工法を組み合わせた平屋で、都心に自宅を持つ人の2拠点目をイメージし、23.45坪にLDKとワークスペースなどを配置したダウンサイジングな住まいになっている。
玄関ホールに、手洗い場や天井埋め込み型の空気清浄設備を設けるなど、コロナ禍での「衛生強化」を意識したつくり。室内にはスマートスピーカーやスマート照明、カメラ、リモコンといったスマートホーム機器10種、ネットワーク家電、機器7種の計約90台を設置し、スマートホーム化も推進する。
YKK APが開発したパネル専用窓(トリプルガラス樹脂窓)と面材、断熱材を1つにしたWHCによる高断熱複合パネルユニット「未来パネル」を採用していることが特徴で、一体化することで、施工作業を効率化でき、約1週間の工期短縮を実現するとのこと。室内側からのパネル施工ができるため従来のように重量化した窓を外部から取り付ける必要がなく、狭小地でも安全かつ容易な施工が可能になるとしている。
YKK AP 事業開発統括部長の東克紀氏は「コロナ禍で見えてきた暮らし方の変化と、建設業界が長く抱える、職人不足、職人の高齢化、この2つの課題の答えを出したいと思い真鶴の家プロジェクトを開始した。しかし2つの課題を1社で解決するのは難しく、WHCに未来パネル開発のキット化と販売、LIVING TECH協会にスマートホームの企画、設計、実装を担っていただいた。YKK APはプロジェクトの統括とパネル専用窓の企画開発部分を請け負っている。実際に設計、施工していただいた大和建設には、かなり無理もきいていただいた」とそれぞれの役割を説明した。
未来パネル開発とパネル住宅のキット化、販売を手掛ける、ワールドハウジングクラブ 代表取締役の新沼教之氏は「窓の重量化が進んでいるが、外側から重たいものを取り回すのは危険なため、なかから施工できるのは現場の安全につながる。また、断熱材と窓を一体化した構造のため、トラックにも積みやすく、配送トラックの台数や現場に行く回数が削減でき、二酸化炭素排出削減にもつながる」とメリットを強調する。
WHCでは、住宅キット販売プラットフォーム「HOME i LAND」(HiL/ハイル)を全国の工務店向けに展開しており、HiLで展開される住宅キットにも未来パネルを採用。住宅の床、壁などの構造体を規格化されたパネルとして工場生産し、施⼯現場で組み合わせて建築する⼯法により、施⼯者の負荷の軽減と工期短縮に結びつける。
スマートホーム化については、日々の暮らしのルーティンの自動化、住む人の好みに合わせたカスタマイズ、ON(在宅ワーク)、OFF(プライベート)の切り替えをポイントに構築。また、スマートホーム化するに従い足りなくなるコンセント不足に対応し、ワークスペースなどのカウンター下、床下などにコンセントを配置。配線も外側からは見えづらくするなど、設計段階から電源周りを考慮することで、スマートな暮らしをサポートする。
一般社団法人LIVING TECH協会 事務局長の長島功氏は「機器がつながることで、暮らす人によりフィットした豊かな暮らしを提供できる。利便性を向上させるのではなく、豊かな暮らしの提供を目指す」と役割を説明した。
WHCが展開するHiL加盟の工務店向けに、「A:照明+家電コントロールセット」「B:照明コントロールセット」「C:家電コントロールセット」と3つのスマートホームパッケージも用意し、導入のしやすさを後押しする。
真鶴の家は、各分野で専門的な知見を持つパートナーとともに理想の住宅を体現するコンセプトモデルづくりとして2020年にスタート。今後は体感ができる展示場として活用するほか、電源などの収まりの提案、間取りの提案の場にしていくという。
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