Appleがこれらの製品で成功を収めたかどうかといえば、それは議論し難いし、同社は、うわさされる「iPhone 13」と新型iPadでも、アプローチをあまり変えないようだ。Appleは毎年、一見小規模なアップデートしか施さないと批判されることも多いが、もっと昔のデバイスと比較すると劇的な違いがあると、専門家は話している。
「ほとんどの人が理解していないのが、漸進的なイノベーションは、Appleにとっては革命的なことであるということだ」。Appleの研究チームの人事部門で4年間勤めた経験があるChris Deaver氏は、2020年に掲載されたWSJの記事で、そう語っている。「Appleが一旦、実にエレガントなソリューションを生み出すと、彼らがその分野の進路を決めて、支配してしまう。早さを競う必要はない。自然に事を進めるだけだ」
おそらく、Cook氏が最も劇的に変えたのは、Appleが私たちに販売するものの内容だろう。
Jobs氏は、人々が実際に触れて感じることができる製品を売ることに喜びを見いだし、そうした製品をより効果的に機能させる手段として、ソフトウェアに主に注力した。2007年に最初のiPhoneを発表したときには、コンピューターサイエンティストのAlan Kay氏に言及している。Jobs氏はKay氏の言葉を引用して、「『ソフトウェアに真剣に取り組んでいる人は、独自のハードウェアも作るべきだ』」と語った。「Alanがそう主張したのは30年前のことで、われわれも今、同じように感じている」
Cook氏の下で、製品ラインアップは拡大したが、Appleのアプローチはそれほど変わっていない。Appleの製品を差別化するために、Cook氏は2019年、Appleでさまざまな月額サービスの提供開始に乗り出した。そうしたサービスには、「Apple News+」(多数の雑誌や新聞を購読できる月額9.99ドルのサービス)や「Apple Arcade」(月額4.99ドル/日本では月額600円のゲームサービス)、最も新しい「Apple Fitness+」(月額9.99ドルのフィットネス指導サービス)などが含まれる。
2019年に月額4.99ドル(日本では月額600円)の動画サブスクリプションサービス「Apple TV+」が発表されたとき、Cook氏は、「これまでのどんなサービスとも異なるもの」になると約束した。
Appleは、Apple TV+の会員数を明かしていないが、2021年度第3四半期(6月26日締め)に175億ドル近くの売り上げを記録した、サービス事業全体の業績に注目が高まっている。この数字は、AppleのMac事業とiPad事業の合計売上高よりも多い。さらに、世界中の何十億もの人々の生活を一変させた新型コロナウイルスの感染拡大にもかかわらず、前年同期と比べても33%近く増加している。
「パンデミックへの世界的な対応を支援し、最高の製品とサービスを人々にお届けすることに今後も注力していく」。Cook氏は7月、アナリストとの電話会議で、そう述べた。「われわれのインスピレーションの最も大きな源は、テクノロジーそのものではなく、大小を問わず、人々が自分の生活の中でテクノロジーをさまざまな方法で利用できるように支援することにある。テクノロジーを使えば、小説を執筆したり、入院患者のために小説を読んであげたり、ジョギング中の心拍数を仮想的な方法で医師に把握してもらったり、オリンピックに向けてトレーニングしたりする、といったことが可能だ」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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