Appleの最高経営責任者(CEO)に任命されてから1年も経っていなかった2012年、Tim Cook氏はNBC Newsとのインタビューに応じた。Cook氏は人々の予想どおり、「iPhone」や「Apple Store」に関する基本的な事柄について語ったほか、一部の「Mac」コンピューターについて、中国ではなくテキサス州で生産を開始することも発表し、人々を驚かせた。また、世界で最も注目されている企業の1つを指揮する責任は理解しているものの、同社の象徴的な共同創設者である故Steve Jobs氏のやり方を模倣するつもりはない、とインタビューで明言している。
「彼が私のためにしてくれたことの1つで、大きな心の重荷を下ろしてくれたのが、『Steveならどうしていただろうか』と絶対に考えてはいけない、と亡くなる前に何度か話してくれたことだ。」とCook氏は語った。「『Steveならどうするだろうか』と絶対に考えてはいけない。正しいことをするだけだ」
この10年間、Cook氏は、Jobs氏よりもはるかに大きく文化や政治に足を踏み入れている。2014年に同性愛者であることを告白し、全米の差別を非難するスピーチをするようになった。2017年~2021年には、Donald Trump前大統領の政策を社会的に批判するという危険な橋を渡りながら、Appleの事業を厳しい輸入関税から守ろうとした。
Cook氏はその間もずっと、Appleのゆっくりだが着実な漸進的イノベーションのペースを崩さず、毎年iPhoneに一見小さな改善を施しているチームを指揮していた。今、Cook氏時代のAppleは、業界で最も評判の高いスマートフォンカメラのいくつかを提供するまでになっている。さらには、スマートフォンやコンピューターを動かす頭脳部分を自社で作る数少ないデバイスメーカーの1社でもあり、「A14」やAppleシリコン「M1」というそれらのチップは、最も高性能なチップの1つとみなされてもいる。
こうしたすべての要素が、Appleを世界で最も価値の高い企業の1つに押し上げる支えになっている。ウォール街の評価によると、同社の価値は2.5兆ドル弱だ。Appleは2020年、売上高2745億ドル、利益570億ドルを記録し、10年前の売上高1082億ドル、利益260億ドルを大幅に上回った。
それでは、Cook氏がAppleにもたらした3つの変化を振り返ってみよう。
10年前、テクノロジー業界の著名なリーダーが、世界的なリーダーたちと社交的な挨拶以外の言葉を交わすのは、非常に稀なことだった。しかし、Cook氏は、2014年に同性愛者であることを告白してから間もなく、さまざまな人権問題について発言するようになった。それから1年も経たないうちに、ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、およびトランスジェンダーコミュニティーに対する差別について論じた600ワード近くの記事をThe Washington Postに寄稿した。
同氏は当時、「全米の州で非常に危険なことが起こっている」と書いている。
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