そして、21世紀の派手な大富豪が繰り広げる宿命の対決は、現在最高潮を迎えている。これは、2人の男が一生をかけた事業の大勝負であり、自分たちの偉業となることに期待をかけた、文明を変えるというビジョンの対決だ。
Musk氏が、人類を火星に送り、われわれを「多惑星生物」にするという大胆な計画を抱いていることは、皆さんもご存じかもしれない。Bezos氏の発想はこれと違い、2019年には人類の未来について独自の考えを披露している。現在の重工業の多くを軌道上に移すとともに、最先端の宇宙ステーションも運行して、地球の環境保全を図るというものだ。
Bezos氏が2019年に描いた「宇宙への道」は、月を超え、Blue Originが設計した着陸船と惑星探査機にまで広がっている。
「今こそ、もう一度月に戻るときだ。今度は長期滞在するために」と、Bezos氏は壇上で語った。
だが、Blue Originがそれを実現するための費用が、どうやらNASAには妥当でなかったようだ。それに代わって、Musk氏が火星計画の実施に使おうとしているのと同じSpaceXのStarshipが、NASAの次の計画に利用される機体として選ばれた。
こうした経緯から、Blue Originは過去にSpaceXの前に敗れたときに使った作戦に戻り、NASAのお役所的な決定に抵抗することにした。その作戦にも先がないと分かると、次はメディア戦略だった。「『途方もなく複雑でリスクが高い』ことの意味」というインフォグラフィックを使って、月着陸船としてのStarshipに対する批判を展開している。
当然、Musk氏はTwitter上で反論する。Blue Originの批判は大げさだ、としたうえで、自社のSpaceXが国際宇宙ステーションへの往復ミッションに何回も成功している記録を引き合いに出した。
16 flights is extremely unlikely. Starship payload to orbit is ~150 tons , so max of 8 to fill 1200 ton tanks of lunar Starship.
— Elon Musk (@elonmusk) August 11, 2021
Without flaps & heat shield, Starship is much lighter. Lunar landing legs don’t add much (1/6 gravity). May only need 1/2 full, ie 4 tanker flights.
Blue Originが提訴に踏み切った今回の動きは、NASAに対して即金提供を試みた最後の一手の後のことだ。NASA長官Bill Nelson氏に宛てて7月に送った公開書状で、Bezos氏はHLS契約の見返りとしてNASAの費用を最大20億ドル(約2200億円)負担すると申し出た。言ってみれば、競合他社との売買が済んだ後で大幅な値引きを持ちかけるような、ダメ元の提案だった。
だが、NASAは今のところ、アルテミス計画にSpaceXを単独で使うという方針を変えていない。Blue Originは、人類が月を目指す計画に遅延をもたらす可能性があることは承知のうえで、引き続き容認を拒んでいる。2024年には月面に新たな足跡を残すというNASAの目標期限は以前から、寛大な表現をすれば意欲的、ではあったが、主要な契約が係争中とあっては、その目標の達成は何重にも難しくなってきたように思える。
「アルテミス計画のもとで可能な限り速やかに、かつ安全に、再び月を目指せるよう、進展があり次第お知らせしたい」と、NASAの担当者は米CNETに語った。
SpaceXにもコメントを求めたが、今のところ回答は得られてない。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)