その後、2人は10年近く互いに距離を置いていたが、2013年には、関係が悪化していたことは明らかだった。同じ頃NASAは、アポロ計画の宇宙飛行士を月に送った歴史的な発射台「39A」のリース先を探していた。両社とも応札するが、テナントが決定される前に、Blue Originは異議を申し立てる。当時のNASA長官Charles Bolden氏のコメントを、SpaceXを優遇したものと解釈したためだった。最終的には、GAOがその抗議を却下し、39A発射台の使用権はSpaceXが取得する。このときの経緯が、HLSをめぐる今回の騒動にひどく似ているのだ。
Blue Originのこの抗議に対して、Musk氏がBezos氏を公然と批判する場面さえあった。言葉の応酬に加えて法的な行動にも出て、それが今日まで続いている。
「今後5年間に、もし(Blue Originが)NASAの定める有人安全性評価基準を満たし、国際宇宙ステーションにドッキングできる宇宙船を何とか開発できたとしたら、39A発射台はまさにその目的のためにあるので、喜んでお貸ししよう。率直に言うと、フレームダクトで踊るユニコーンを目撃する可能性の方が高そうだが」。当時、Musk氏がSpaceNewsに語った言葉だ。
それから1年と少し経って、SpaceXは連邦政府の支援を受けつつ、Blue Originに対してさらに勝利を挙げる。このときは、米特許商標庁の特許審査部が、打ち上げロケットの海上着陸に関するBlue Originの特許の大部分を事実上無効と裁定した。これに対し、SpaceXは、Blue Originの特許に記された概念は既に科学分野で他に多くの考案者がおり、さらにはSFでは何十年も前から描かれていると主張し、審査部もそれに合意した。
最近まで、SpaceXとBlue Originの確執は、宇宙業界によほど注目していた人でもない限り、一般にはそれほど知られてこなかった。それが変わり始めたのは、2015年11月、Blue Originが「New Shepard」ロケット1機の着陸に成功した歴史的な瞬間からだ。同社もBezos氏も、この偉業を有頂天で絶賛した。折しも、SpaceXの「Falcon 9」の1機がミッション終了後に着陸を試みながら、まだ成功していない頃だったからだ。
Musk氏は反撃に躍起になり、SpaceXは2012年と2013年に試作機「Grasshopper」の着陸に何度も成功していると指摘した。さらに、カーマンラインに達して戻ってくるNew Shepardの「上り下り」飛行と比べて、Falcon 9が試みる軌道ミッションの方がはるかに複雑であり、難度が高いとも付け加えている。
It is, however, important to clear up the difference between "space" and "orbit", as described well by https://t.co/7PD42m37fZ
— Elon Musk (@elonmusk) November 24, 2015
翌12月、SpaceXがついにFalcon 9の着陸に成功したとき、今度はBezos氏が反撃。
「Falconの準軌道ブースターの着陸を祝す」と、言外に「準軌道」の部分を強調しながら、少し皮肉めいた祝辞を述べ、「これで、われわれの仲間になりましたね」と付け加えた。
Congrats @SpaceX on landing Falcon's suborbital booster stage. Welcome to the club!
— Jeff Bezos (@JeffBezos) December 22, 2015
Bezos氏とMusk氏は、衛星ブロードバンドをめぐっても、水面下の競争を続けることになった。SpaceXは既に、「Starlink」によって地球低軌道から高速インターネット通信を提供し始めている。一方のBezos氏は、皆さんもよくご存じのもうひとつの事業「Amazon」で、同じようなインターネット通信の計画「Project Kuiper」を進めているのだ。
Project Kuiperについて詳しく書かれた2019年の記事に対して、Musk氏はTwitterでシンプルに、Bezos氏を「真似っこ(コピーキャット)」と呼んだ。
.@JeffBezos copy
— Elon Musk (@elonmusk) April 9, 2019
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