楽天グループ、ひいては楽天モバイルに関しては、エリア整備の前倒しに加え、契約者数が増えたことでKDDIに支払うローミング費用が増大し、損失がより拡大している。1年無料キャンペーンが終了したユーザーが増えてきたことで、徐々に通信料収入による売上も出てきたものの、その規模はまだ小さいだけに一層ローミング費用が重くのしかかっている印象だ。
楽天モバイルとしてはローミング費用を抑えるためにも、人口カバー率96%の早期達成のため基地局整備を進めているのだが、半導体不足の影響を受けたことで目標達成時期を2021年夏から、2021年中へと後ろ倒しすることとなってしまった。他の3社はいずれも現状、半導体不足の影響を受けていないとしているだけに、新興キャリアであり独自の完全仮想化ネットワークを打ち出す、楽天モバイルの弱さが出る形となってしまったといえる。
一方で三木谷氏は、楽天モバイルのユーザーが他の楽天サービスを利用する割合が高い傾向にあり、「凄いシナジー効果がある」と評価。それに加えて楽天グループは、同社の完全仮想化モバイルネットワークのシステム基盤となる「RCP」(Rakuten Communications Platform)の海外販売を進めており、8月にはドイツの新興キャリアである「1&1」への提供を明らかにしている。
楽天モバイルとしては国内のモバイルネットワークによる収入だけでなく、他の楽天サービスとのシナジー、そしてRCPの販売による「一石三鳥」でビジネスを強化していくとし、2023年に単独での黒字化を目指すとしている。だが、三木谷氏はRCPの動向によって黒字化を「1年早めるのは難しいが、少し前倒しすることは可能になってくると思う」と、今後のRCPの販売に強い自信を示している。
ただ1&1のように、楽天モバイルと立場が近い新興キャリアであればRCPの導入は比較的しやすいが、携帯電話市場は世界的にもすでに飽和傾向にあるためそうした事業者自体の数が少ない。一方で既存の携帯電話会社のネットワークにRCPを導入するには、既存の大手ベンダーがオープン化に消極的なこと、そして仮想化技術が抱えるパフォーマンスの問題など、多くの課題を解決していく必要があることから容易ではない。
三木谷氏は、仮想化モバイルネットワークの市場規模が15兆円と見ており、先進的な取り組みをしている楽天モバイルが非常に優位な立場に立てるとしているが、一連の課題を考慮すると実際の顧客獲得にどこまで結び付けられるかは未知数だ。国内でのネットワーク整備遅れも含め、引き続き多くの課題を抱えていることに変わりはなく、先行きはまだ不透明というのが筆者の現状の見方である。
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