テキサス州オースティンの夏は気温が38度に達することもあるため、この町に住んでいる筆者は、泳げる場所をよく探している。ありがたいことに、この町には泳げる場所がいくつもある。例えばダウンタウンの西には、テキサス州最古のスイミングプールである「Deep Eddy」と呼ばれる市営施設がある。市街地から少し離れれば、トラビス湖という大きな湖もある。この湖は、釣り人やスライダーを取り付けた2階建てのはしけ型遊覧客船で楽しむ人たちで賑わっている。
しかし、筆者がこれまで考えたこともなく、もちろん試したことなどまったくない、新たな水遊びの場所が存在する。モバイルアプリでレンタルできる、近所の家の裏庭にある私有プールだ。
2018年の夏にスタートした「Swimply」は、「Airbnb」スタイルでスイミングプールを利用できるサービスを提供している。筆者はその話を聞いて、早速泳ぎに行くスケジュールを立てた。それからしばらく経った7月のある日曜日の午後、筆者は、高いペカンの木に囲まれた、見知らぬ人の浅いプールに慎重に足を踏み入れた。そこでは、虹色のたてがみがある巨大なユニコーンのフロートが待っていた。
Swimplyは、共同創業者であるAsher Weinberger氏(35歳)とBunim Laskin氏(24歳)が思い付いたサービスだ。2人は、Weinberger氏がニューヨーク市で開催した起業家向けの人脈ネットワーク作りイベントで出会った。当時大学生だったLaskin氏はそのイベントで、Weinberger氏に私有プールを収益化するアイデアを売り込んだ。
2人は「Google Earth」でプール付きの家を探し、個別に訪問してプールをレンタルするつもりがあるかどうかを尋ねて回った。その後簡単なウェブサイトを作り、数週間のうちに何千人もの人が知らない人の家のプールを楽しんだのを見て、2人はビジネスを立ち上げることを決めた。
Swimplyは現在、米国のすべての州、カナダ、オーストラリアで展開されており、50万人のユーザーと1万3000件のプールが登録されている。Weinberger氏は、このサービスは「シェアリングエコノミー」の延長線上にある実験的なもので、人々が必要とするものではなく、欲しいものを提供するサービスだと考えているという。これは、交通手段を提供するUberや、ホスピタリティーを提供するAirbnbとは対照的だ。
同氏によれば、新型コロナウイルスの流行はSwimplyに大きな影響をもたらした。このアプリは冬の間はほとんど使われず、その上同社はコロナ禍による金融不安の大波に襲われた。「契約は打ち切られた。私たちの資金も尽きた。先行きがどうなるかは分からなかった」とWeinberger氏は言う。
結果的には、プライベートプールのレンタルに大きな関心が集まり、Swimplyは2019年から2020年にかけて5000%近い成長を遂げた。
「利益が出るようになったことで、ベンチャーキャピタルが集まってきた」とWeinberger氏は言う。「数カ月前には、シリーズAの資金調達ラウンドで1000万ドルを調達した。これによってチームの人数は2人から70人弱に増えた」
同氏は、Swimplyが市場の供給側と需要側の両方のニーズを満たすことができたと述べている。このサービスは、プールを貸し出す側がコロナ禍で発生した出費を穴埋めするのに役立っただけでなく、自宅に閉じこもらざるを得なかった人たちにも気晴らしの手段を提供したと同氏は言う。
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