興味深い疑問がある。プロスポーツのチームで、人工知能(AI)は人間よりも優れたコーチになれるのだろうか。もちろん、今はまだそんな段階には至っていないが、プロチームが選手を有利にするために技術を取り入れる早さを考えれば、そんな想像も今後は荒唐無稽ともいえなくなりそうだ。
このコンセプトが先頃、スポーツ賭博の専門サイト「SportsBettingDime」を中心に実験された。OpenAIによる最新のテキスト生成ツール「GPT-3」の協力を受け、AIがヘッドコーチを模倣できるかどうか調べたのである。この調査(詳細な結果はこちら)では、選手の士気を鼓舞するスピーチを生成すること、試合中のシナリオを想定してそれに対処すること、チーム育成を促すことをGPT-3に指示した。チーム育成は、多くのスポーツでヘッドコーチの重要な役割だ。SportsBettingDimeはまた、GPT-3の成果を全米バスケットボール協会(NBA)と全米フットボールリーグ(NFL)の熱心なファン(スーパーファン)に評価してもらった。
まるで映画の1コマのようで陳腐に思われるかもしれないが、選手の士気を鼓舞するスピーチというのは、多くのコーチにとって大切な仕事だ。ここぞというタイミングで、現実直視と激励の言葉をちょうどいい塩梅でかけて、選手たちを奮い立たせる。この調査ではGPT-3を使って断片的な3つのスピーチを生成し、これにコーチが実際に発した2つのスピーチを加えて、NFLとNBAのファンから偏りのない意見を募った。
「戦術や作戦とは違って、スピーチはヘッドコーチの人間らしさがもっと強く出る、データには代われない仕事の1つだ。驚いたことに、スーパーファンによると、モチベーションを駆り立て、感情面で支えるという点では、AIも引けをとらないようだ」と、調査結果には書かれている。
それどころか、テストの設定が緩いのは認めたうえで、AIによるスピーチのうち2つは、やる気を奮い立たせるという点の評価(1点~10点、10点が最高)で、それぞれ6.82点および6.47点で1~2位を独占した。ただし、AIによる3番目のスピーチは最下位となっており、結果の差が大きいことも示唆されている。
興味深いことに、このやる気を奮い立たせるという点での評価は、スピーチの音声が人間らしいかどうかとは一致しなかった。少なくとも、この調査に参加したファンの間ではそういう結果になっている。人間が発したスピーチは2つとも、本物のコーチが発したように聞こえると評価された(77.8%と66.3%)が、AIによるスピーチの本物っぽさも、66.4%から51.0%の幅に収まっていた。
この調査では、試合中のシナリオにおけるAIの意思決定についても、スーパーファンの判断と比較して評価している。
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