Facebookの人工知能(AI)研究チームは米国時間7月9日、カーネギーメロン大学のコンピューターサイエンス学部およびカリフォルニア大学バークレー校と協力し、ロボットがさまざまな地形にリアルタイムで適応できるようにするシステム「Rapid Motor Adaptation(RMA)」を発表した。動画では、中国の新興企業Unitree Roboticsが開発した4足歩行のロボットが歩き方を調整しながら石だらけの地面を移動したり、登山道の階段を下ったり、工事現場を通り抜けたり、屋外のさまざまな地形上を歩き回ったりする様子が映っている。
このロボットは、砂や岩などの歩きにくい地面を歩く犬のようでもあり、前進しながら歩幅を調整し、転ばずに適応する。
研究チームは、リビングルームの床にプラスチックシートをしき、そこに油をまいて表面を滑りやすくした。また、厚板などの障害物を積み上げた上を歩かせたり、ロボットの背に重りを乗せたりした。そのたびにロボットはバランスを取り戻し、前進し続けた。
FacebookのAI研究チームに参加しているカリフォルニア大学バークレー校のJitendra Malik教授によると、このロボットは試行錯誤を繰り返しながら、周囲から得る情報を通じて素早く適応する方法を学習したという。コンピュータービジョンを利用せず、さまざまな表面に対する本体の反応から学習しており、このプロセスは人間が学習する方法に似ている。たとえば、人間は硬い面から砂の上に移動すると、足が沈むことを感知して歩き方を調整する。Malik教授は、「ロボット工学の課題は、現実世界がこのように多様性に富んでいることだ」と述べている。
研究チームはコンピューターシミュレーションでAI搭載ロボットを訓練し、現実世界でテストする前に、さまざまな地面やさらに過酷な状況を経験させた。研究チームはRMAについて、「脚付きロボットが、世界を探索しながら相互作用によって、ゼロから環境に適応できるようにする、完全に学習に基づく初のシステム」だと述べている。
Facebookによると、AIの進歩により、捜索活動および救助活動に携わるロボットや、階段などの障害物がある場所を進まなければならない家庭で使用されるロボットの性能を向上させられるという。この研究は、住民の生活の質を低下させる可能性がある交通などの状況を、リアルタイムデータを用いて緩和するスマートシティにも応用できる。
一定の環境に対応できるようにロボットをプログラミングすることは可能だが、マシンが遭遇しうるすべての障害をプログラマーが予測するのは難しい。リアルタイムで適応する方法をロボットに教える手法は、より低価格のハードウェアでもうまく利用でき、将来的にコスト削減に役立つ可能性もある。
コロナ禍のせいでラボが閉鎖されたため、AI研究者らは実験方法を変更しなければならなかった。カリフォルニア大学バークレー校の大学院生であるAshish Kumar氏は、自宅やベイエリアのハイキングコース、近くの建設現場でロボットをテストしたという。ロボットはテスト中に何度も故障した。
論文によれば、RMAを適用したこのロボットは、他のシステムよりも性能が優れ、砂地やぬかるみ、山道、丈の高い草が生えた地面、泥の山を転倒せずに歩けたという。ハイキングコースの階段を下りなければならないテストでは、成功率が70%だった。セメントの山や小石の山を通り抜けさせるテストでは、80%の確率で転倒しなかった。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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