Facebook上のグループ「Club Ki-Fair」の管理者であるValerie Zhongは、単純なことを約束した。このグループに参加すると、日用品の無料サンプルがもらえるというものだ。メンバーはヘアケア用品、マニキュア、コーヒーメーカーなどを手に入れられるという気前のいい話だった。
もちろん、うまい話には裏がある。このグループのメンバーは、Amazonで売られている特定の商品を購入し、その商品のレビューを書く必要がある。そうすると、購入した費用の返金を受けることができるのだ。
「当グループでは、素晴らしい優良な商品を無料お試し用として常に提供しています」と、ZhongはClub Ki-Fairのページに投稿していた。レビューが高評価でなければならないとは書かれていなかったが、グループのメンバーが紹介しているのは、レビュー商品に対する賞賛の声ばかりだった。
宣伝の対価として商品を提供するClub Ki-Fairの作戦は、決して珍しいものではない。Amazonにとっては、「報酬付き」のレビューを禁じているにもかかわらず、偽レビューが重大な問題になっている。Amazonは、米国時間6月16日のブログ記事でその問題の大きさを認め、大量の偽レビューを繰り返す組織的な活動について検出を強化すると述べている。2020年に同社は、偽と疑われるレビュー2億件を削除し、190万の外部出品者それぞれの商品ページに掲載される可能性があったものを未然に防いでいる。同社のアルゴリズムでは、新規の顧客アカウントが集団になって同じ商品をレビューするなどの疑わしい行為がないかどうか、サイトが精査されるようになっている。
だが、問題がそれで終わるわけではない。そうした活動は、Zhongが運営しているような場に移るだけだ。
同ブログによると、「Amazon外部、特にソーシャルメディアで偽のレビューを依頼する不正な行為が増加している傾向を、われわれも確認している。自分でソーシャルメディアサービスを利用して偽レビューを売買する者もいれば、そうした行為を代行するサードパーティーのサービスプロバイダーを雇う者もいる」という。
Amazonは、ソーシャルメディアの具体的な名前こそあげなかったが、そのような行為をFacebookで見つけるのは難しくない。筆者は、Club Ki-Fairの様子を数週間ほど見ていたのだが、グループへの参加を承認されてから、その行為を目撃した(ちなみに、筆者は商品のレビューはしていないし、返金も受けていない)。張りきったFacebookユーザーが、商品をレビューする、と名乗りをあげていたのだ。
「このグループは実に素晴らしい」と投稿したメンバーもいる。あるヘアブラシ付きドライヤー商品が、自分の細いストレートヘアの「ボリュームを出す」のに役立っていると賞賛したうえで、こう付け加えていた。「ヘアスタイリングに理想的な1台。おまけに、超使いやすい」
4月には、Facebookが1万6000以上のレビュー売買グループを削除したと、英国の競争・市場庁が発表している。これについて、Facebookからのコメントは得られなかった。
Club Ki-Fairのやり口は、商品を購入し、レビューしたことを証明してPayPalで返金を受けるというモデルだ。このモデルのほか、ベンダーが顧客に対し、レビューの謝礼としてギフトカードを受け取る方法に関する情報を、購入した商品に添えるという手法もある。The Wall Street Journalの報道によると、Amazonでバッテリー充電器を販売していたベンダーが、この手法で商品を出荷していたという。RAVPowerというそのベンダーはAmazonで販売停止になったと、The Vergeが16日に報じている。
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