その一方で、自分の投稿に対する人々の反応を予測するのは難しいということも判明している。学術雑誌Sage Journalsで発表された2018年の調査レポートによると、参加者の66%近くは「私の新しいBMWをお見せしよう」といった富やステータスのシグナリングをすれば、この先友人となるかもしれない人達に、自身をより魅力的に見せることができると考えていたが、実際にはその逆だった。人々は高級車をもつ人と友達になることよりも、ホンダのような無難な車を持つ人と友達になることに高い社会的関心を示した。
人々が自分をより良く見せたいと願って投稿するという考えは、意外なものではない。ソーシャルメディアでは、社会から望まれていると自分が考えるイメージに従って、理想の自分を提示することがよくある、とコロンビアビジネススクールの社会科学者で博士課程4年生のErica Bailey氏は述べている。それが常に富の提示という形をとるわけではないが、そうなることも珍しくない。
しかし、Instagramに頻繁に投稿する理想の自分が実際の自分と一致していない場合、自分の頭の中だけでも問題が起きてしまうことがある。
「その2つの姿がかけ離れていることがもたらすプレッシャーによって、ジレンマが生まれてしまうこともある」(Bailey氏)
Bailey氏はコロンビアビジネススクールのビジネス准教授であるSandra Matz氏と共同で調査レポートを執筆した。1万人以上のFacebookユーザーからデータを収集したその調査では、自分のプロフィールは実際の自分を正確に反映していると評価した人の方が、自己満足度も高いことが分かった。
「ソーシャルネットワークで自慢すると反発を受ける可能性があること、そして、自身のアイデンティティにあまり良い影響をもたらさないことが分かっており、『自分はこんな風に見られたい』と感じないのなら、基本的にソーシャルネットワークでそうした投稿をすべきではないだろう」(Matz氏)
その一方で、もし自分が裕福で、それを人々に知らせることで満足感を得ており、自分のトレンディーなライフスタイルについて投稿するときに嫌味を言われたりする可能性を気にしないのであれば、何も問題はないのかもしれない。
Matz氏によると、発した「サイン」のせいで、意図せずに自分のステータスが伝わってしまうこともあるという。裕福な人々は、意図せずに高価なものを好む傾向がある。一方で、低所得の人々は、ステータスがあることを示すバッジのような役割を果たすものを意図的に選んでいる可能性もある。
そして、高価なアイテムの写真を投稿することは比較的表面的なことに思えるかもしれないが、Bailey氏とMatz氏によると、こうした行動の一部は、特に米国の極端な貧富の格差と結びついているという。米労働総同盟産業別組合会議(AFL-CIO)によると、2019年、S&P 500企業の最高経営責任者(CEO)と労働者の平均賃金比率は264対1だったという。
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