スマートフォンネイティブが見ている世界

コロナ禍のインスタは「映えよりもつながり」--友人との交流や趣味情報が癒しに

 

コロナ関連情報の次にユーザーが求めたものは?

 コロナ禍前後で、若者のSNSの使い方は変わったのだろうか。若者たちの利用実態と変化について見ていきたい。

 アライドアーキテクツの「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う消費者のSNS利用実態調査」(2020年4月)によると、新型コロナウイルス感染拡大防止にともなう外出自粛要請が行われる中、SNSを利用する時間について34.5%が「すごく増えた」「増えた」と回答。多くの人が会社や学校に行かず自宅にこもっていたため、SNSの利用時間が増えた人が多かったようだ。

 利用が増えたSNSは、「Twitter」(67%)、「LINE」(60%)、「Instagram」(39%)、「Facebook」(29%)など。利用目的は、Twitter、LINE、Facebookは「新型コロナウイルス感染症に関するニュース等の情報収集」がトップで、それに「友人・知人等とのコミュニケーション」や「趣味/好きなことに関する情報収集やコミュニケーション」が続いた。一方、Instagramは「趣味/好きなことに関する情報収集やコミュニケーション」目的での利用が最多だった。

 新型コロナウイルス感染症に関する情報は不明なことも多く、日々の報道に翻弄された人も多かったのではないか。そんな中、友人・知人との交流や、趣味や好きなことに関する情報は癒やされる時間となっただろう。

コロナ禍では映えより“つながり”を求める

 「休校で暇なときはストーリーズを投稿したり、インスタのDMで友だちとやり取りしていた」と女子高生たちは言う。「なかなか直接会えないから」と、LINEのビデオ通話も増えたそうだ。退屈なのでせめて好きなものや楽しいものを見たいと、SNSを見たり、動画を見たりして過ごしたという。

 テテマーチの「“コロナ感染拡大前後”で比較した、SNSにおける生活者の行動変容」(2020年4月)によると、コロナ感染拡大後はInstagramのストーリーズ投稿の平均表示回数は31%増加し、ストーリーズの閲覧時間や閲覧頻度が増加していた。

 ご存知の通り、もともとInstagramは「インスタ映え」に代表されるキラキラ・リア充・おしゃれ写真が多く投稿される場だ。ストーリーズは主にそれ以外の、リアルタイム性が高いこと、コミュニケーション目的なことが投稿される傾向にある。

 コロナ禍で緊急事態宣言が発令された状況の中、外出やおしゃれもままならず、インスタ映えから遠い生活をしていた人は多かっただろう。インスタ映えではなく、つながりや好きなものの情報を求めてストーリーズを使った人が多かったと考えられるのだ。

 さらに、臨時休校やリモート勤務化の中、ユーザーのためになるノウハウを発信する「学習コンテンツ」関連のストーリーズ投稿の平均表示回数が上昇。「アパレル」や「雑貨」関連のストーリーズ投稿の平均表示回数も、外出自粛が呼びかけられた3月上旬から上昇。「観光」「自治体」関連のストーリーズ投稿の平均表示回数も、外出自粛要請が出されて大型テーマパークの休園延長が発表された3月下旬以降伸びていた。

 全体に、その時の生活で不足しているもの、好きだけれど手に入れられないものを見て癒されたり、情報を得たりしていたようだ。

インスタライブや「#リレー」も大流行

 つながりを求めたのは、友だちとだけではない。Instagramのライブ配信、インスタライブも急増した。3月上旬と下旬を比べると、全世界でインスタライブの視聴者は50%増加している。行動が制限されたスポーツ選手、ミュージシャン、タレント、インフルエンサーから一般人まで幅広い人が配信したのだ。

 「同じ会社の同僚や友だちとも会えず、実家に帰ることもできない。孤独だったので、インスタライブには癒やされた」と、一人暮らしをする30代女性会社員は言う。「ライブが中止になったミュージシャンとかが日替わりで配信してくれていたから、一人の時間も楽しかったし、癒やされた」。

 過去の映像を期間限定で配信したり、自宅から生配信していた例も多く、Superflyや坂本龍一、SHISHAMO、宇多田ヒカル、小曽根真など様々なミュージシャンがYouTubeやInstagram、Facebookなどで配信している。あくまでつながりや、「Stay Home」時間を楽しんでもらおうという純粋な気持ちで発信されたものが多かった。

 タレントやインフルエンサーも、撮影やイベントなどがなくなり、このときばかりはキラキラ・リア充投稿は減少傾向に。代わりに、ファンからの質問を受け付けたり、自宅から料理動画を投稿するなど、つながり寄りのコンテンツが増えていた。

 Zoomなどのテレビ会議サービスを使ったオンライン飲み会も、会いに行けなくても交流できるものとして広く流行した。大学生の間でもオンライン飲み会が行われたり、中高校生同士がビデオ通話やゲームのボイスチャットなどで交流したりしていた。

 「#○○リレー」「#○○バトン」「#○○チャレンジ」も流行。「バトン」や「リレー」とは、特定のお題に対してSNSなどで回答していくことを指す。次の回答者を指定したり、見た人は回答しなければならない内容になっていることも多いのだ。

 コロナ禍では、新型コロナウイルス終息と人と人との縁を結ぶ意味を込めておにぎり写真を投稿する「#祈るおむすびバトン」、読書文化の普及に貢献するため、好きな本の表紙画像のみを1日1冊公開し、7日間続けるという「#7日間ブックカバーチャレンジ」など、多くのバトンやリレーが投稿され、タイムラインが埋め尽くされる勢いだった。

左から「#祈るおむすびバトン」「#おうちおやつ」
左から「#祈るおむすびバトン」「#おうちおやつ」

 若者たちの間では、「#プランクチャレンジ」や「#休校チャレンジ」などのチャレンジ系投稿はもちろん、「#おうち時間」(465万件)、「#おうちおやつ」(30万3000件)などのハッシュタグ投稿も増えた。「時間が有り余っていたからチャレンジ系動画を初投稿した」という子も。彼女は、スイーツを作っては「#おうちおやつ」をつけて写真を投稿していたそうだ。

 SNSはトラブルのもとにもなるが、もともと人とつながって交流したり、情報を交換するためのものだ。災害時には特にその機能を発揮することで知られている。コロナ禍にSNSを通じて、日常の大切さや人とのつながりの価値を身にしみて感じた人は多かったのではないだろうか。

  

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

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