トヨタ自動車とKINTOは6月7日、自動車のサブスクリプションプラン「KINTO」にて、「GRヤリス 特別仕様車 RZ“High performance・モリゾウセレクション”」の取扱を開始したと発表した。
GRヤリスは、トヨタが2020年に発売したスポーツカー。「世界ラリー選手権」(WRC)を始めとするモータースポーツへの参戦を考慮した車両で、1.6L直列3気筒直噴ターボエンジンやスポーツ4WDシステム「GR-FOUR」など、通常の「ヤリス」とは異なるハイパフォーマンスカーとなっている。
KINTOでは、従来もGRヤリスを取り扱ってきたが、今回新たに提供するモリゾウセレクションでは、「人に寄り添って進化するクルマ」として、納車後も最新のソフトウェアを反映するサービスを盛り込んでいる。
アップデートでは、技術革新にあわせて最新のソフトウェアを都度反映。「走る」「曲がる」「止まる」といった基本性能の最適化を目指す。従来は、技術革新の反映は製品のモデルチェンジごととなるため、納車済みのクルマをアップデートすることはできなかったが、モリゾウセレクションではこれを可能とする。
アップデートは、トヨタの「GR Garage」各店舗にて提供する予定。 提供開始時期は2022年春ごろを予定しており、詳細なメニューについても同時期に発表するとしている。
また将来的には、利用者一人ひとりの走行データを取得・分析し、ソフトウェアをカスタマイズするサービスも提供する予定。「人」に寄り添ったクルマの進化を将来的に目指すという。
モリゾウセレクションではこのほか、トヨタの関連レーシングチームであり、トヨタ自動車社長の豊田章夫氏も「モリゾウ」としてドライバーを務める「ROOKIE Racing」のロゴを各所にデザインするほか、フロントガラスにはモリゾウのサインが入るという、特別仕様となっている。
モリゾウセレクションの利用料は、月々5万4340円から。価格にはアップデート費用も含まれている。契約期間は3年間のみで、延長はできない。
トヨタでは、関連レーシングチームである「TOYOTA GAZOO Racing」やROOKIE Racingでの活動を通し、モータースポーツを起点としたクルマづくりを進めてきた。GRヤリスは2020年より「スーパー耐久」に参戦しており、2021年には将来のカーボンニュートラル時代の選択肢となることを目指した水素エンジン自動車もスーパー耐久に参戦。これらレース活動で得られた知見を、自動車開発に活かしている。
ROOKIE Racingにおいては、性能面における都度のアップデートに加え、所属ドライバーそれぞれの運転データをもとに、ハンドルの重さや出力の制御など、各人ごとにパーソナライズしたカスタムを加えているという。モリゾウセレクションでは、このような車両性能、ドライバーの運転特性をアップデートしていくことで、「人に寄り添ったクルマの進化」を目指す。
今回のサービスをKINTOで提供する理由について、KINTO 代表取締役社長の小寺信也氏は、「KINTOでは契約期間中ずっとお客様との関係が続き、コミュニケーションが容易に取れる」と説明する。ディーラーの場合は転居などで関係が断たれることがあるが、サブスクリプションプランの場合はその心配が無い。
また小寺氏は、アップデートについては「一番最新の一番良い製品を提供しますので乗ってみてください」と言えるという、料金込み込みのサブスクリプションプランによる利点を説明。さらに、パーソナライズした車両を中古車として流通させる場合、初期化した際の安全性を担保する点でも、クルマの所有者がKINTOであることから状態管理の面で有利だとしている。
トヨタ自動車 執行役員の佐藤恒治氏は、将来的には性能面のアップデートにも踏み切りたいとしつつ、許認可や性能保証といった課題も多いとしている。当面の間は、四輪駆動の前後配分やブレーキ、ハンドリングといった運転特性のアップデートをメインとしつつ、ゆくゆくはトータルなパフォーマンス向上として、パワートレインへのテコ入れやハードウェアの付加による性能アップも視野に入れていきたいと語った。
また佐藤氏は、ディーラーで購入したGRヤリスについて、様々な状態のクルマへアップデートを適用することで、性能や安全性といった部分に問題が無いかを検証する必要があると説明。一方でこの部分についても「諦めずに挑戦していきたいという強い意志を持っている」と語った。
佐藤氏は、「お客様が所有するクルマを使うという概念の中で、『愛車』として育てていく、ということが我々(トヨタ)の最大のゴール」と説明し、これを目指すためにKINTOでは様々な挑戦に取り組んでいくとした。今回のアップデートサービスは、まずはKINTOのGRヤリスで実施するものの、最終的なゴールとして「全てのクルマに安心安全を」を実現するため、不確定要素が多いものの、ゆくゆくは様々な車種へ展開することも検討していきたいと語った。
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