この1年間、Jennison Asuncionさんはパンデミック下でライフラインとなった「Zoom」などのアプリに、字幕自動生成といったアクセシビリティー機能が追加されるのを見てきた。同じく重要なコミュニケーションツールであるメッセージングアプリの「Slack」でも、スマートフォンやコンピューターの画面上の情報を読み上げるスクリーンリーダー機能の対応が向上している。そのおかげで、視覚障害者であるAsuncionさんは、以前よりも簡単にメッセージを利用できるようになった。
「そうした企業で、『われわれは今、人々が生産性を十分に発揮するために本当に必要な製品を開発するようになった』という気づきの瞬間があったことを私は願っている」。デジタルアクセスとインクルージョンの促進を目指して米国時間5月20日に開催された「Global Accessibility Awareness Day」(GAAD)の共同創設者であるAsuncionさんは、そう語った。「パンデミックが収束しても、彼らにはその考えを忘れないでいてほしい」
世界中で新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を受ける人が増え、企業やオフィスが再開を検討する中で、Asuncionさんの願いは、障害者コミュニティーの多くの人々が切実に願っていることだ。旅行や対面での人との交流、パンデミック前の仕事生活を取り戻すことを熱望する人々がいる一方で、パンデミックの何年も前から障害者コミュニティーが求めていたリモートワークやリモート学習などの便宜的な策が、今後も継続することを望む人々も存在する。
そうした対策は、6年以上前に視力を失ったアクセシビリティーコンサルタントのJoel Isaacさんのような人々の役に立つだろう。パンデミック前に就いていた仕事で、Isaacさんはサンフランシスコのダウンタウンにあるオフィスに出入りするたびに、数え切れないほどの危険に直面していた。数年前には、誤って建設現場に足を踏み入れ、穴に落ちそうになったこともある。そのときは、あと数歩で穴に落ちるというところで、女性に助けられた。それ以来、Isaacさんは勤務先の会社にリモートワークの選択肢が必要だと訴えた。
その出来事は、パンデミックによって多くの人が自宅で仕事や勉強、買い物をしなければならなくなる前のことだった。この1年間で、フードデリバリーアプリからEコマースサイトまで、あらゆるものが、あると便利なものから、コロナウイルスのリスクを最小限に抑えたい人々にとって不可欠なサービスへと変わった。そうしたサービスは、以前から物理的な場所へのアクセスに苦労していた障害者や、基礎疾患があるためにコロナウイルスに感染すると重症化するリスクのある人々にとって、特に大きな助けとなった。
企業向けにアプリケーションを作成および管理するためのツールを提供するProgress Softwareでデベロッパーリレーションズ担当ディレクターを務めるSara Faatz氏は、「便利なアプリは、不可欠なアプリになった」と話す。「こうしたテクノロジーに頼ることが今後なくなることはないので、私たちは最初からアクセシビリティーの考え方を持たなければならない」(Faatz氏)
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