コロナ禍が浮き彫りにしたアクセシビリティーの重要性--生きやすい社会にするには - (page 3)

Abrar Al-Heeti (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2021年06月03日 07時30分

 障害者の権利団体や擁護者のおかげで、企業や雇用主は、インクルージョン向上のために変化が必要であることをますます認識するようになっている。だが、やらなければならないことは、まだたくさん残っている。

 Greco氏は、「確かに、表面的には改善したこともある」と述べている。「しかし、体系的な問題、つまり、アクセシビリティーについて考え、アクセシビリティーを組み込み、障害がある人々と話して、問題解決のために障害がある人々を雇用するという全体的な考えは、そうした表面的なことの下に埋もれてしまっている」(同氏)

変化した世界を生き抜く

 米国の一部の地域では、人口の半数以上がコロナウイルスワクチンをすでに接種済みだ。ワクチン接種が完了した人は、屋内外を問わずマスク着用は不要と米疾病予防管理センター(CDC)が先頃発表したが、感染が依然として脅威である一部の州では、ソーシャルディスタンスとマスク着用が依然義務づけられている。しかし、徐々に通常の状態に戻ってきていることは、変化したこの世界にまだ慣れつつある段階の障害者を不安にさせている。

 Greco氏は、5月にパンデミックの発生後初めて食料品店を訪れたとき、周囲の人が本当にマスクを着用しており、ソーシャルディスタンスで定められている2m程の距離をとっているのか不安になった、と話す。Appleは2020年11月、「人の検出」機能を発表した。この機能は、視覚障害があるユーザーが「iPhone 12 Pro」「iPhone 12 Pro Max」「iPad Pro」のいずれかを使用している場合、人が接近していることを知らせてくれるというものだ。だが、これらのデバイスは、Appleの高価な製品ラインアップの中でもハイエンドの部類に属する。例えば、iPhone 12 Proの価格は999ドル(日本では税込11万7480円)からとなっており、気軽に購入できるものではない。

 その他の変化も、障害者コミュニティーに負担をかける可能性がある。サンフランシスコに拠点を置く、視覚障害者を支援する非営利団体のLightHouse for the Blind and Visually Impairedでアクセステクノロジー担当ディレクターを務めるErin Lauridsen氏は、非接触型のサービス形態やセルフサービス式キオスクを選ぶ企業が増えると、アクセシビリティーの要素が見落とされ、自分を含む視覚障害者はそうした空間を利用するのに苦労しなければならなくなるのではないか、と懸念しているという。同氏は、企業が最初からアクセシビリティーを組み込んで、これらのツールを構築することが非常に重要だとしている。

 しかし、パンデミック下で進歩したこともあった。物やスペースの表面など、手の接触が多い部分を減らすため、多くのレストランはQRコードが印刷されたプレートをテーブルに設置するようになった。利用客はそれをスキャンして、メニューを閲覧することができる。多くの場合(常にではない)、このようなメニューにはLauridsen氏のスクリーンリーダーを利用できる。おかげで、レストランのメニューを確かめるためにデリバリーアプリを開かなくてもよくなった。

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