Appleの最高経営責任者(CEO)Tim Cook氏は、自社がセキュリティとプライバシーのとりでであるかのようにアピールしている。プライバシーは人権だと主張しており、その姿勢の表れとして、自社が暗号化などの保護技術を積極的に導入していることを挙げている。しかし、The New York Times(NYT)は米国時間5月17日、Appleが中国政府の要求に対してますます譲歩するようになっており、中国のユーザーのプライバシーや言論の自由を制限しているとして、詳しい経緯を報じている。
記事は、Appleが中国貴陽市に建設中で6月に完成予定の新しいデータセンターの件を中心に取り上げている。NYTによると、このセンターでAppleのサーバーに中国のユーザー情報が保存される。暗号化で保護されるが、ロックを解除するキーも中国で保管されるという。そのため、ユーザー情報を中国政府が入手する可能性があるとNYTは指摘する。記事によると、データセンターの物理的な管理と運営も、中国政府が関わる従業員が行うという。
NYTは、「セキュリティの専門家とAppleのエンジニアによると、このデータセンターで、Appleが譲歩することで、中国政府が多くの中国居住者の電子メール、写真、文書、連絡先、位置情報にアクセスできないようにすることはほぼ不可能になっている」と報じている。
AppleはNYTに対して、同社は中国の法律を順守しており、ユーザーのデータを安全に保つために「できることはすべて」したとし、「中国を含め、われわれが事業を展開する国で、ユーザーとユーザーデータのセキュリティを侵害したことはない」と述べている。さらなるコメントを求めたところ、同じように回答した。
さらにAppleの広報担当者は、顧客データを保護する暗号鍵は同社が管理しており、中国では他国で利用しているものより高度な暗号技術を採用しているとNYTに伝えている。
Here is Apple's full statement on our story.
— Jack Nicas (@jacknicas) May 17, 2021
After Apple sent this, I worked with the company to understand what it believed to be wrong in our story and then made changes to correct any outdated information and to include their view when needed. pic.twitter.com/shwaJkWyAi
中国は、Appleにとって最も重要地域の1つだ。2020会計年度には売上高の15%近くを占めたほか、製品の多くは中国で組み立てられている。NYTによると、中国政府はそのような状況を利用して、政府が所有する外部企業にユーザーデータを一部移管する契約をAppleと締結している。
しかしAppleは、ただ中国政府の要求に屈してきただけではない。NYTによると、同社は「App Store」の検閲も行っており、現地の法律を順守するための措置だと説明しているという。Appleの検閲対象には、1989年の天安門事件や法輪功、ダライ・ラマ、チベットや台湾の独立への言及が含まれるとみられる。
NYTは独自の分析を引用し、「2017年以来、中国で約5万5000件のアクティブなアプリがAppleの『App Store』から消えており、ほとんどがほかの国では利用可能になっている」とし、「これらのアプリのうち、3万5000件以上はゲームだ。中国では当局の承認を得なければならない。2万件は、海外の報道機関、同性愛者のデートサービス、暗号化されたメッセージングアプリを含む幅広いカテゴリーに及ぶ。またAppleは、民主化を求める抗議行動を組織するためのツールやインターネットの制限を回避するためのツール、ダライ・ラマに関するアプリをブロックした」と報じている。
Appleはこれらの数字に異議を唱え、一部の開発者は自ら自身のアプリを取り下げることを選んだと述べているという。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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