第44代アメリカ合衆国大統領は、アメリカ史上初めてのアフリカ系アメリカ人であった。言わずとしれた、バラク・オバマ氏である。就任時にはアメリカの人種問題の大きな前進として世界中から注目された。しかしこれは逆に言うと、初代大統領であるジョージ・ワシントンが就任した1789年から2009年に至るまでの220年間、43代の大統領がいたにもかかわらず、「黒人」の大統領が1人も存在しなかったということである。“Black Lives Matter”運動の広がりも記憶に新しいが、アメリカにおける人種問題の根深さがうかがえる。
本書はそんなオバマ氏の大統領回顧録である。大統領選の様子はもちろん、そこにいたるまでのキャリアや、自身が経験したアメリカの分断の真実などが描かれており、アメリカという巨大な国が抱える問題が浮き彫りになっている。オバマ氏は自分が大統領になることでアメリカ人種問題に与えるポジティブな影響はもちろん歓迎していたが、自分が個人ではなく「象徴」として持ち上げられすぎることへの懸念も持っていた。この葛藤は在任中も続いたようである。
書籍内では大統領選の裏舞台が事細かに語られているため、本書はアメリカという国の政治を知るための指南書ともなるだろう。しかし、語り口が気軽で親しみやすく、また、父親として、夫として苦悩する個人的なエピソードも多く語られており、ひとりの人間の生き方を知る文学としても魅力的だ。その飾らない人柄が大統領としての魅力でもあったのだろう。
新大統領バイデン氏が就任した今、あらためてオバマ氏の時代を振り返ってみてはどうだろうか。
今回ご紹介した「約束の地 大統領回顧録 I 」の要約記事はこちら。この記事は、ビジネスパーソンのスキルや知識アップに役立つ“今読むべき本”を厳選し、要約してアプリやネットで伝える「flier(フライヤー)」からの転載になります。CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
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