ぜひ一度手に取りたい--ブックレビュー400回から選んだ最上の3冊

 ブックレビューのコーナーが誕生してから丸8年が経った。ときおり登場する特集記事をのぞけば、通算で400回目を迎えることになる。毎年、大量のビジネス書が世に出されるが、筆者が紹介しているのはそのほんの一部でしかない。だからこそ、レビューを書かせていただいた本、1冊1冊に対する思い入れは深い。今回は、400回の中でも特に印象に残っている3冊を紹介したい。

基礎となる1冊--「スイッチ!--『変われない』を変える方法」


「スイッチ!--『変われない』を変える方法」

 最初は、習慣を変えることができずに困っているすべての人に、お勧めできる1冊。本書では、心理学者のジョナサン・ハイト氏が『しあわせ仮説』という本の中で使っている、人の感情を「象」、理性を「象使い」とする比喩を用いている。そして、「象使いに方向を教え」「象にやる気を与え」「道筋を決める」ことで、必ず変化を引き起こせるとしている。さまざまな具体例を挙げつつ、各例で、どのように「象使いに方向を教え」「象にやる気を与え」「道筋を決めた」のかを分析しており、読み進めていくうちに、自分でも推測できるようになってくる。そうなったら、後は自分で変えたいことに置き換えて行動に移すだけだ。

 本書をレビューしたのは2010年8月だが、その後に読んだビジネス書でも、本書に出てくるのと同じ心理学用語が出てきたり、言葉は違えど似た現象が取りあげられていることが何度かあり、理解を助けてくれている。ビジネス書の場合、同じようなテーマが繰り返し取りあげられることはよくあるが、類書を並行的に読むことで理解が深まることもよくあることだ。

力をもらえる1冊--「クリエイティブ喧嘩術」


「クリエイティブ喧嘩術」

 2冊目は、映画監督である大友啓史氏の仕事術の本だ。2016~2017年にかけても、大友監督の作品が立て続けに公開されているが、本書は、2013年に出版されているので、登場するのはそれまでに公開済みの作品となる。大友監督がNHKに勤務していた時代の作品である「ハゲタカ」や「龍馬伝」のほか、映画「るろうに剣心」や「プラチナデータ」といった作品での仕事の決め方、進め方、困難の乗り越え方、スタッフや役者との向き合い方などが熱く語られている。

 読んでいるだけで、まあ、現場の人は大変だろうなあと想像しすぎてしまい、胃が痛くなりそうな話ではあるが、これほどの熱量がなければ、スクリーンや画面越しに熱量の伝わる作品は作れないのだろうなあとも思う。

 「喧嘩術」と言えば穏やかではないが、穏やかにやり過ごせてしまう仕事などはないわけで、仕事と真剣に向き合い、戦っていくということでは、筆者のような一介のライターであっても会社員であっても変わらない。そういう意味で、落ち込んでいるときに読み返すと力をもらえる1冊なのだ。新社会人にお勧めしたい本でもある。

仕事の進め方がわかる1冊--「職業、ブックライター。 毎月1冊10万字書く私の方法」


「職業、ブックライター。 毎月1冊10万字書く私の方法」

 3冊目の本書には、筆者の仕事に最も直接的に関係のある内容が書かれている。本1冊を書き上げることの大変さは、身にしみて良く分かっているので、少しでも楽になれる方法があればと思ったが、そんな簡単にいくわけもない。大量の文章を書くことが仕事に関係していない人にとっては、興味のない話かもしれないが、ひとつひとつの仕事に対する心構えや、入念な準備、作業の進め方などは、本を書くことが仕事ではない人にとっても、参考になる部分があるのではないだろうか。

 とにかく、「本1冊を書き上げる」ことを「プロジェクト」だと考えると、分かりやすいかもしれない。新しいプロジェクトを始めるときは、プロジェクト全体を考えて途方にくれてしまうが、小さい単位のまとまりだと考えると、「そのくらいなら」と進められる。その積み重ねで、結果的にプロジェクト全体が終わるのだと。このことは、1冊目に紹介した「スイッチ!」でも繰り返し言われていることであり、仕事を完遂することも、習慣を変えてなりたい自分になることも、実は根本的には同じ考えに基づくものなのかもしれない。

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