2009年3月に始まったこのブックレビューのコーナーも、毎週1冊の本を紹介し続けて丸6年が経ち、ありがたいことに300回目を迎えることとなった。CNET Japanの読者の方々に向けたブックレビューということで、主にビジネスや技術に関連した書籍を紹介している。
それなりの冊数を読んできたとはいえ、世の中には息をするように本を読み続けている方も大勢いて、私などが「読書術」を語るのはおこがましいが、それなりの回数を続けてこられたのには、何かしらの工夫があるのではないかと思われているようなので、記念すべき300回目は、私自身の読書への取り組み方を紹介する。
まず「いつ本を読んでいるのか」とよく聞かれるが、たいていは「本を読む」時間を決めて読んでいる。毎週、最低1冊は読まなければいけないので、仕事の一貫としてほかの仕事と同じように「本を読む」時間をタスクとして予定に入れている。いわゆる「すきま時間」などはあてにしない。
ただ、「本を読む」時間は、必ずしも仕事場も兼ねる自宅とは限らず、移動がある日は電車の中で読み、外出先で待機時間がある日はカフェなどで読むことにする。時には入浴中に読むこともある。このように「読めそうな時間」をあらかじめ知っておき、「読む」と決めておくのが、確実に読書をするための方法と言える。
誰でもそうだろうが、本の種類によって読み方は変わる。私の場合、小説を読む時は最初のページから順番に、想像力もフルに活用して読むが、ビジネス書を読む時は必ずしも最初のページから読むとは限らない。
本を手に取ったら最初に目次をじっくり読む。本全体の構成を知ることで断然読みやすくなるからだ。次に「はじめに」と「終わりに」を読む。「終わりに」がないこともあるが、たいていのビジネス書にはある。これを読むと著者が一番伝えたいこと、伝えたかったことが分かる。さらに著者のプロフィールを読む。ビジネス書の著者のプロフィールは、経歴が細かく書いてあることが多い。特定の企業名が出ていれば、どこで培われた経験なのかが確認でき、どの業界をベースにした話なのかが理解できると、身近な話なのかそうでないのかが分かる。この段階を経て、本文にとりかかるとだいぶ読みやすくなる。
忙しければ自分に必要だと思われる、あるいは「読みたい」と思う箇所だけを読めばいい。特に最近のビジネス書は、重要な箇所をハイライトや太字にしてあり、読みやすい工夫がされている場合も少なくない。そういう所だけを拾って読むのでも構わないだろう。
自分が必要としている情報がはっきりしている場合は、書店に行くだけで目的の本のタイトルが目に飛び込んでくるのではないかと思う。Amazonでもキーワードで検索すれば、人気の本がすぐに分かるので、買いやすい。
そうではなく、なんとなく自分の役に立ちそうな本が読みたい場合は、自分にとっての「はずれ」もあるものと考えて、手当たり次第に気になる本を読んでみるしかない。このブックレビューを参考にしていただければ幸いだが、身近な人のお勧め本や尊敬する著名人の推薦本を読んいく内に、“勘”のようなものが磨かれるだろう。量を読まずして、勘を養うことはできない。
本に書かれていることを、自分でもやってみたいと思ったら、即座に実行してみるに限る。もちろんすべてを実践することはできないし、その必要もない。強烈に印象に残ったことを1つでも役立てることができれば、それで良しとする。
内容を忘れたくない場合は、「読書メモ」を付けておくのがいいだろう。読書メモと言っても、忙しければ本のタイトルと印象に残ったフレーズやキーワードだけを残すのでもいい。書いて残しておくだけで、ずいぶん忘れなくなるものだ。専用のノートを作ってもいいし、Evernoteやメモ帳アプリ、メディアマーカーなどの読書管理ができるウェブサービスを利用するのも便利だ。私の場合は、「ブックレビュー」を書くことが、読書メモのような効果を生んでいる。
私の読書において、一番多い読書の形態は、いまだに「紙の本」だ。次に多いのが「Kindle」の電子書籍版で、英語の本の場合はときどきオーディオブックが入ってくる。日本語のオーディオブックももう少し活用したいところだが、読みたいと思う本は、すでに紙で読んでしまっていることが多く、あまり積極的に利用できていないのが現状だ。
Kindleによる読書率は、毎年上がっている。新刊でも紙とほぼ同時にKindle版が販売されることが増えてきたからだ。Kindleに限らず電子書籍は、物理的な場所を取らず持ち運びの重量も気にしなくて済むのでお勧めだ。
電子書籍専用デバイスがなくても、iPhoneやAndroidのスマートフォンやタブレットを持っていれば、専用アプリをインストールするだけで、電子書籍が読める。Kindleの場合は、PC用のアプリもある。電子書籍は、読みたいと思った時にすぐ購入できて、即座に読み始められるのが、何よりの利点だ。また、荷物を増やすことなくいつでも続きを読むことができる。デバイスを防水ケースに入れれば、入浴中でも読書ができる。
満員電車の中や、車での移動が多い人ならば、オーディオブックも検討する価値があるだろう。日本語のオーディオブックならFebe、英語のオーディオブックならAudibleが有名だ。
もっと本が読みたいと思うなら、どのような形態であれ、自分のライフスタイルに合わせてどんどん取り入れていくと楽しい。私自身も、今まで以上に、面白い本を皆さまにご紹介できるように、たくさんの本と出会っていきたい。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
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